地形角度測定器 / Deckungswinkelmesser


間接射撃などを行う際に必要となる射撃位置と目標までの高低差を測定できる機器。小型で簡易の構造ながら比較的精度の高い測定結果が得られる。部隊指揮官や下士官などが身に着ける書類ケース(Meldekartentasche)に収納する。

より高精度な角度計測が必要な場面では角度計測器Rk31(Richtkreis 31)を使用する。




1942年2月に発行された重機関銃の間接射撃に関するマニュアルにはこの角度測定器が紹介されている。その冒頭にあるイラストは次の解説文が書かれている。

角度測定器 5/6400
水平と地形角度を大まかに測定するために使用する。地形角度は水平面と銃口の射線によって形成される角度(a)。
















コの字型のフレームに測定器本体が収まっており、使用時には本体を180度回転させてフレームから引き出す。掲載品はスチール製(初期は真鍮製)で頑丈な造り。表面仕上げは赤茶のプライマーの上にジャーマングレイ(RAL7021)塗装。フレーム側面には定規(6cmまで)の目盛りが刻まれている。長さ107㎜、高さ28㎜、幅10㎜(フック金具を除く)、重さ131g。




1864年設立、光学機器や測定機器を製造するドイツのメーカー「メラーヴェーデル ※Möller Wedel」のロゴマーク。製造番号と思われる「10672」の刻印も底面に打たれている。このメーカーは高精度な光学測定システムを主力として今でも存続している。




使用方法を記した真鍮製のプレート。

膝をついた状態で、片方の目に前に測定器をかざし、背景と目盛り数字を同時に読めるようにする。数字を読む。ひと目盛り=5/6400ミル




リベット留めされた白い樹脂プレート。鉛筆で重要な数値情報などを書き込むメモ欄として使い、指でこすれば文字は簡単に消すことができる。










コの字型フレームの軸を中心に測定器が回転する。




フレームの内側に設けられた凹と測定器側面のピンが嵌合することで閉じ・開きのそれぞれの位置で測定器が固定される。












使用時の状態。全長170㎜。






側面に設けられた小さな接眼レンズ。収納時はフレームに隠れてレンズは保護される。




接眼レンズ反対側の採光用スリット。ここから光を取り入れないと内部の目盛りは読めない。














同じメーカー(メラーヴェーデル)で製造された別の個体。各部は簡略化されており、より後になって生産された品と思われるがどちらも製造年を示す刻印が無い。






使用方法の説明はリベット留めの金属製プレートから印刷?に変更。




メモ書き樹脂プレートが廃止され、白の塗装になっている。またフックは鋼線を曲げた簡易なタイプに変更されている。






使用時、上側となる測定器の端に設けられたU字型フック。接合部はスムーズに可動する。








使用時は写真のようにU字フック部分を軽く保持する。このフックを介して測定器をぶら下げるため、測定器は常に垂直位置が保たれる。また底部が重くなるデザインは垂直の安定に寄与する。




実際の使い方。U字型フックを持って測定器をぶら下げ、接眼レンズはまつ毛に接する程に、目に近づける。




内部の目盛りは中央を水平の「0」として、上下にそれぞれ「500ミル」まで。



ひと目盛り5ミル。




読み方を示すマニュアルのイラスト。「Z.」は敵を表し、この場合は水平よりも2目盛り下なので、地形角度は-10ミルとなる。






実際の視野に近いイメージ。縦に長い目盛りは400ミル程度の範囲しか見えず、上下は大きくぼやける。目盛りと背景はどちらもピントが合うため同時に確認可能。この測定器は誰でも簡単に使用できる。

目盛り「0」は観測者の位置と水平であることを示し、赤い灯台上部までの地形角度はおよそ「55ミル」と計測できる。




接眼レンズと目の位置を動かすと上下の目盛りも確認できる。目盛り左のガントリークレーン上部は「160ミル」、目盛り右の山頂は「250ミル」となる。



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