ジャーマングレイ / Dunkelgrau

第二次大戦初期のドイツ陸軍装甲部隊を象徴する色であるジャーマングレイ。

暗いグレー(Dunkelgrau)を意味するジャーマングレイがどのような色であったのか、「ダークイエロー」のページと同様の方法で色味を検証する。

ドイツ軍の車輌は当初、カーキ(Erdgelb)、グリーン(Grun)、ブラウン(Braun)の3色迷彩が施され、1937年7月に採用されたジャーマングレイ(Dunkelgrau、RAL7021)にはダークブラウン(Dunkelbraun、RAL7017)の迷彩が施されていた。1940年7月以降はジャーマングレイ(以下、本文ではRAL7021と表記)の単色となり、1943年2月にダークイエローが採用されるまでの期間は車輌のみならず各種装備も含め幅広く使われる色となった。


検証方法は模型用の塗料を白いプラ板に吹き付けた色見本とオリジナル塗装が残る装備品を比較する。以下に掲載する画像はカメラのホワイトバランスなどの調整をマニュアルで行い、できる限り実物に近い色を画像で再現するように努めたが、液晶画面に表示される色は信頼できないので、実際の色を確認する場合はここで紹介する塗料をご入手頂きたい。



参考にした模型用塗料。左から、タミヤ「ジャーマングレイ」、クレオス「ジャーマングレー」、ガイアノーツ「ジャーマングレー (ドゥンケルグラウ)」の3種類。ガイアノーツはRALのカラーチップをもとに正確な色味を再現した事をうたっている。

私感では、

■タミヤ・ジャーマングレイ
最も明るいグレイとなっており、他の2社とは色が明らかに違う。青味はやや弱い。

■クレオス・ジャーマングレー
かなり暗い青味がかったグレイでガイアノーツに近似している色だが、僅かに明るい。
画像よりも実物の色見本の方がより暗く見える。

■ガイアノーツ・ジャーマングレー (ドゥンケルグラウ)
3社の中で最も暗い。グレイのイメージではなく、若干の青味と僅かなグレイを感じる黒色。
こちらも画像より実物の色見本の方がより暗く見える。


以下の検証は色見本と実物を重ねた目視での結果をもとにコメントを書いています。




1943年製、MG34用の予備銃身ケース。部隊番号、またはMG34のシリアル番号と同一の番号と思われる3桁の数字「681」がステンシル塗装されている。クレオスが近似であるが、僅かに実物は明るい。




オリジナル塗装が残り部品の欠損もない完品の1942年製1メートル測距儀(Em 1m R36)。全体を撮影したこのカットは実物の色よりも写真としての見栄え優先のため、実際よりも明るいグレイに写っている。




青味が弱く、明るさも含め3つの色見本とはやや異なった色であるが3つの中ではクレオスが近い。




1メートル測距儀に使用するショルダーハーネスの金属フレーム。1937年7月以降に採用されたRAL7021とダークブラウンのRAL7017と思われる2色迷彩が残っている手持ちでは唯一の品。




色の傾向としてはクレオスが近いが、実物の方が少し明るい。







MG15やMG34に使用された75発サドルマガジン(Doppel Trommel 15 / Patronentrommel 34)の装填作業で使用する木製台座。上の写真は木製台座の裏側を撮影。本項で紹介している8点の実物の中で最も明るいグレイとなっており青味も弱い。明るさ・色味ともに3つの色見本とは異なっている。

※木製台座に製造年を示す刻印は確認できないが、付属するスチール製の装填器具には旧デザインのバッフェンアムトが打たれている。この刻印から木製台座がRAL7021導入以前に製造された可能性もあり、そもそもこのグレイはRAL7021で塗装されていない可能性も考えられるので注意が必要。







1942年の後期に生産されたと推測されるMGZ40。1メートル測距儀の金属フレームに塗装されたRAL7021とほぼ同じ色に見える。画像では最も暗いガイアノーツが近似色に見えるが、実際にはクレオスの色が近く、実物の方が僅かに明るい。






生産年不明だがアルミ製のため1941年以前の製造と思われる弾薬箱。赤茶の下地塗装が無く、アルミの地に直接RAL7021が塗装されている。画像上側の黒いRAL7021が残っている部分(弾薬箱の蓋で覆われる箇所)がよりオリジナルに近い色と思われ、これ以外の箇所は経年による退色?で少し明るいグレーへと変化している。クレオスが近似の色であるが、実物の方が若干明るい。







1939年製のアルミ製弾薬箱。こちらも赤茶の下地塗装無しに直接RAL7021が塗装されている。実物の方がやや明るいがクレオスが近い。







刻印が薄く読み取れないため生産年不明のスチール製弾薬箱。赤茶の下地塗装の上からRAL7021が塗装されている。錆のように見える部分は下地塗装が露出しているところ。こちらもクレオスが近似だが、いくぶん実物の方が明るい。




上項で紹介した3つの弾薬箱を並べる。
・左上  1939年製造のアルミ製
・右上  生産年不明のアルミ製
・下    生産年不明のスチール製

これを見ると、3つともほぼ同じ色であることが確認できる。 経年による色の変化も考慮する必要はあるが、おおむねRAL7021はこのような色であったのではないかと推測する。




■まとめ

 オリジナル塗装が残る実物8点との比較ではクレオスが最もRAL7021に近い印象であるが、実物の方がやや明るい傾向にある。タミヤのジャーマングレイは小さな模型塗装用にスケールエフェクトを考慮した明るい色調であるため、実物とは異なっている。ガイアノーツのジャーマングレーは明らかに黒すぎるという結果だが、弾薬箱の蓋に隠れたRAL7021が他の部分よりも暗い色目となっているように、経年により明るいグレーに変色する可能性も考えられる。

 8点の中で木製の装填作業台を除くと、グレイの色味は比較的近似した範囲となっており(※測距儀のみ少し青味が弱いが...)基本的には青味を含んだ黒に近い暗いグレイであったことは確認ができる。




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