■グレネード発射器(シースベッヒャー2型) の弾薬





G Gr Ger用に開発・運用された各種の弾薬を紹介。榴弾と対戦車榴弾30・40、宣伝弾は実物を、それ以外はマニュアルに掲載されているイラストで解説する。




各種のグレネードはそれ自体に発射薬が無いため、専用の空砲カートリッジによる圧力で発射される。装薬量や弾薬形状の違いから様々なタイプが存在する。ここではマニュアルに掲載されている3種類を紹介。

「a」 黒い木製弾頭が付いた対戦車グレネード(Grosse Gewehr-Pnazergranate)用で装薬量は1.9g。

「b」 通常の榴弾(Gewehr-Sprenggranate)用。

「c」 黄色の短い木製弾頭が付いたタイプでこちらも主に榴弾用と思われる。


グレネード発射用の専用空砲弾はグレネード本体に紙製?の帯で巻かれた状態で支給されることが多いようだ。射撃の直前に分離させるので空砲弾を紛失する可能性を減らし、空砲ではなく実弾を誤って使うことによる事故も防ぐことができる。




■榴弾 / Gewehrsprenggranate (G.Sprgr.)







主に対人用として使われた榴弾で1942年2月から使われている。G Gr Gerからの射撃以外に、手榴弾としても使う事が可能。発射には1gの発射薬が充填された空砲を使い射程は約250メートル。その後、発射薬が1.5gとなった空砲弾が導入されると射程は最大で500メートルまで延びた。全長144㎜、直径31㎜。




弾薬本体は大まかに3分割できる。左から、時限式信管を作動させる信管が収まったベークライト製の底部キャップ、黄色の筒には炸薬、右の弾頭には着発式信管が内蔵され、先端にはベークライト製の信管作動装置がついている。




弾頭部の内側。着弾により先端のベークライト製キャップが押されると撃針が作動し信管が作動、炸薬に点火する。




底部のベークライト製キャップにはライフリングとかみ合う8本の突起が設けられている。底部のマイナスネジは内側の信管を固定する。


榴弾の断面図。本弾薬には2つの信管がある。一つは弾頭部の着発式信管。G Gr Gerから発射されたグレネードが目標に衝突すると作動し起爆する。もう一つが弾薬の底部に配置された時限式信管。発射後に作動し、6秒前後で起爆する。着発式信管が何らかの不具合で不発に終わった場合でも、時限式信管が作動する事により確実な起爆が期待できる。 また時限式信管の採用によって手榴弾としての運用を可能にしている。ベークライト製底部キャップと弾薬本体がひもで接続されており、手榴弾として使う場合はねじ込まれた底部キャップを外し、引っ張ると紐が一緒に引かれて時限式信管が作動、速やかに投擲する。この一連の手順は木製の柄が付いた手榴弾(Stielhandgranate 24)とほぼ同じ。

本弾薬は複数のバリエーションがあり、手榴弾としては使えないタイプも存在する。これらは底部が一体式となった末期の簡略型であったり、時限式信管を省略した仕様となっている。




G Gr Ger へ装填したところ。ベークライト製の弾頭部が少しだけ銃身先端から突き出す。




■対戦車榴弾30 /
Kleine Gewehr-Panzergranate 30(K.G.Pzgr.30)







射程距離は約100メートル。1942年2月から使われた初期の対戦車榴弾。弾頭径は30㎜。40㎜の装甲板を貫徹(60度に傾斜した装甲板)できる性能を有していたが軽装甲向きであり、導入時にはすでに時代遅れの性能であった。全長160㎜、直径31㎜。

射撃には発射薬1.5g~1.9gの空砲弾を使用する。




炸薬を内蔵したスチール製弾頭部(黒の塗装仕上げ)、起爆薬と雷管を内蔵するアルミ削り出し後部、信管起爆装置と底部キャップの4部品に分解できる。










ライフリングに噛み合う8個の突起が加工された弾薬底部。






アルミ部品の内部。信管作動時によるものか、腐食が見られる。




弾薬の底部に収められた信管起爆装置。強固なスプリングと板バネを併用した安全装置がついており、発射時の強烈な加速で安全装置が外れ、着弾の衝撃で針が信管を叩く。




弾薬底部から順番に信管起爆装置、雷管、起爆薬、2次起爆薬、TNT炸薬、金属製ライナー、弾頭キャップという構造。




■対戦車榴弾40 /
Grosse Gewehr-Panzergranate 40(gr.G.Pzgr.)








最初に採用された弾頭径30mmのG.Pzgr.は威力が弱く、装甲を強化する戦車には時代遅れの性能となっていたため、弾頭径が40㎜となった威力向上型が1942年11月に導入。G Gr Ger では最も多く使用された対戦車用の弾薬となった。先端部はプレスのスチール製、後部のライフリングと噛み合う突起が設けられた部分はベークライト製だが、アルミ製も存在する。全長181㎜、直径45㎜。

膨らんだ先端部の内側には円錐状の金属製ライナーに保持された炸薬が詰まっており、射距離に関係なく傾斜角60度で80㎜、傾斜角30度で40㎜の装甲貫徹力を持つ。固定目標に対する最大射程は約100メートルであるが、発射された弾頭は山なりの弾道を描くため、移動目標の場合は75メートル以下、高い命中率を期待する場合は50メートル以下での射撃が望ましいとされていた。 射撃には発射薬1.5g~1.9gの空砲弾を使用する。




本体は中央で分割できる構造。ねじ込んで固定される。



弾薬後部の筒は前部がスチール、後部がベークライト製。この中に、信管と信管起爆装置が収まる。






信管起爆装置と底部キャップは対戦車榴弾30と共通。




信管起爆装置が収まる内部。中央の穴に撃針が刺さると信管が作動する。




こちらはベークライト部品の弾頭側。ベークライト製の部品によく見られる記号刻印のほかに、生産年を示す「1942」、製造メーカーコード「cpk」※メーカー不明が確認できる。




こちらはグレネード後部がアルミ製となったバリエーション。






G Gr Ger への装填。弾頭径が大きいので銃身に収まる部分は弾薬の2/5ほどになる。




■発煙弾 / Gewehrblendgranate 42(Gw B Gr 42)



スチール製の本体にグレーの塗装が施された発煙弾。射程は約180メートルほどで着発式と時限式の二つの信管を持つ。筒状の部品は弾薬底部を保護するキャップ。




■照明弾 / Gewehr-Fallschirmleuchtgranate (Gw FS Lt Gr)





発射後に落下傘が開き、発光体が降下中に目標地域を照らす照明弾。射程は約650メートル、発光時間は約28秒間。直径400メートルの範囲を照射する。弾薬本体は黒色で塗装され先端キャップは白色。射撃には発射薬1.5gの空砲弾を使用。




■宣伝弾 / Gewehr-Propagandagranate (G.Propgr.)








空洞になっている内部に宣伝用のビラが収められた特殊な弾薬。およそ30度の角度で発射した場合の射程は450~500メートル。発射時に作動する時限式信管により発射の9秒後、高度50メートル付近で弾薬が分解しビラが飛散する。ビラのサイズは90×150㎜で約40枚が内部に収まる。全長148㎜、直径31㎜。

発射薬が1.5gから1.7gの空砲弾を使用する。




宣伝弾を構成する主要部品。 底部のキャップ以外はスチール製。宣伝ビラは2つのパッキングカバー(写真右側の2つ)によって内部で緩く保持される。




マニュアル掲載のイラスト。 一番左の部品は弾薬底部の保護キャップ。






弾頭キャップは差し込むだけで簡単に脱着可。






アルミ製の弾薬底部。







宣伝弾の準備手順。あらかじめ印刷された宣伝用ビラ(a)を小さく巻いて、筒の中に押し込み、弾頭部のキャップを取り付ける。



発射の9秒後、底部の時限式信管が作動し板状に薄く成形された推進薬(Ausstoßladung)に点火。爆発の圧力を受けた底部キャップ(Treibspiegel)は宣伝ビラと弾薬先端キャップを前方へ吹き飛ばし、空中にビラを飛散させる。




■対戦車榴弾46 / S.S.GewehrPanzergranate 46(S.S.G.Pzgr.46)



弾頭径が46㎜へ拡大した威力向上型。射程は約150メートル。弾頭には150gの炸薬が収まっており、貫徹力は90㎜(60度に傾斜した装甲板)。発射薬1.5g~1.7gの空砲弾を使用する。




■対戦車榴弾61 / S.S.GewehrPanzergranate 61(S.S.G.Pzgr.61)



弾頭径が61㎜へと拡大したことで弾頭の炸薬量は200gとなり、120㎜の貫徹力(60度に傾斜した装甲板)となった。射程は約150メートル。発射薬1.5g~1.7gの空砲弾を使用する。対戦車榴弾46と61はともに戦争末期に登場し、少量の生産に終わった。




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