8mmモーゼル弾(7.92×57mm) / Patronen s.S.

 1888年にドイツ帝国で採用されたボルトアクションライフルGew88の使用弾として開発された7.92×57mmI(※Infanterie 歩兵の意味)。そしてこの弾薬は大量の備蓄在庫を処理するために1898年にモーゼルが開発した新型小銃 Gew98の弾薬としても使用される。

※7.92×57mmIの弾薬。ラウンドノーズと呼ばれる弾頭が丸い形状となっている。


 1905年に7.92×57mmIを原型として改良された弾薬が7.92×57mmIS(※Infanterie Spitzgeschoss 歩兵・尖頭の意味)であり、これが現在、8mmモーゼル弾とよばれる弾薬である。7.92×57mmIからの主な改良点は、弾頭形状の尖鋭化、弾丸径を8.1mmから8.2mmへ、弾頭重量は14.7グラムから10.0グラムへ軽量化、発射薬の変更であり、弾道の低伸性と有効射程距離の向上が図られた。

 その後、さらなる改良が施された7.92×57mms.S.(※schweres Spitzgeschoss 重・尖頭の意味)が登場。弾頭の重量は10.0グラムから12.8グラムへ増加、3.05グラムから2.85グラムへ減少した装薬量により、初速が880m/sから785m/sへと12%ほど低下するものの、射距離300~400メートルあたりで弾速がほぼ同じ、射距離700メートルでは122%となり遠距離における存速性能が向上している。

 同時代の各国の主用ライフル弾と比較しても威力は強力で、薄い装甲板であれば容易に貫徹する。7.92×57mm弾は第二次大戦のドイツ軍の小銃/機関銃弾として幅広く使用され、1940年から1944年末の5年間だけでも120億発近い数量が生産されている。

 第二次大戦中に使用された7.92×57mm弾は真鍮製やスチール製の薬莢ケース、通常弾頭・徹甲弾・曳光弾などの弾頭の種類、熱帯用や寒冷地用など使用目的に応じてさまざまな種類が生産された。



真鍮製薬莢が使われている1939年製の7.92×57mm s.S.弾。


7.92×57mm
1940年製の7.92×57mm s.S.弾。軟鉄を使用したスチール製薬莢で銅メッキが施されている。真鍮の不足から大戦中期以降に登場したイメージのあるスチール製薬莢であるが、1940年にはすでに量産されていたことがわかる。




写真上が真鍮製薬莢、下がパーカーライジング処理を施しラッカー塗料を塗布したスチール製薬莢のカットモデル。

■スチール製薬莢について

真鍮製薬莢の生産に必要な銅の輸入が制限され、埋蔵量も限られていたドイツでは第二次大戦の前から銅の枯渇を回避するための代用材料研究が始まり、スチールが候補に選ばれた。スチール製薬莢の大きな欠点であった腐食の問題は、100%純銅の電気メッキをケースの内側と外側の全体に施すことで対処。スチール製薬莢の生産に関しては1937年に冷間押出法の新たな技術が確立されたことで大量生産への道が開いた。

その後、パーカーライジング処理とラッカー塗料を併用した腐食防止技術が確立されると、銅メッキの薬莢は1943年9月以降に廃止。このラッカー塗料が塗布された薬莢は優れた対腐食性を発揮したものの、薬室内に薬莢が張り付くという問題が発生し、特に発射速度の高いMG42では作動不良を引き起こす要因となった。この対処法として1944年6月以降に生産されたすべての薬莢にはワックスコーティングが施されている。このワックスはオイルやグリスよりも優れた乾式の潤滑剤で汚れやホコリなどが薬莢表面に付着しにくいという特徴を持つ。射撃時の発射薬燃焼で発生する高温により液体化する性質があり、薬室内での薬莢張り付き防止に一定の効果を発揮した。




7.92×57mm

1945年製の7.92×57mm s.S.弾。ラッカーコート仕上げのスチール製薬莢。 メッキ仕上げの薬莢と色目がほぼ同じで見分けがつきにくい。軟鉄の表面をリン酸塩被膜処理(パーカーライジング)し、ラッカー塗料を塗布してある。差し込まれた弾頭が抜けないように、薬莢の口がクランプ加工されている。




7.92×57mm
こちらは参考品。ヘッドスタンプの刻印から1961年に東ドイツで生産されたと思われる7.92×57mm弾。スチール製薬莢でラッカーコート仕上げ。大戦中のオリジナルと比較すると薬莢部分はより暗い色目となっているが弾頭はオリジナルとまったく同じで区別がつかない。




1941年製の軽量尖頭弾(昼間用曳光弾・アルミ弾芯 ※I.S.L'spur)。弾頭先端部から1センチが黒染め処理され、薬莢底部には幅5ミリの緑色ストライプが塗られている。鉄製薬莢には銅メッキが施されており、真鍮製薬莢と比較して赤味が強い。




1943年製の徹甲リン弾(強装弾・熱帯用 ※P.m.k.-v.-TP)。雷管周囲が黒なので徹甲リン弾(鋼鉄弾芯・焼夷弾 ※P.m.k.)を示し、同じ色がケースマウスに塗装されていることから熱帯用(TP)となる。また弾頭中央のクリヤーグリーンで塗装された帯は強装弾を示す。真鍮製薬莢。




1942年製の尖頭徹甲弾(昼間用曳光弾・100~600m ※S.m.k.L'spur 100/600)。弾頭先端から1センチが黒染めされており、雷管周囲が赤色で着色されている。薬莢は真鍮製。



一つ上で紹介した尖頭徹甲弾(昼間用曳光弾・100~600m ※S.m.k.L'spur 100/600)のカットモデル。



弾頭(※S.m.k.L'spur 100/600)を構成する各部を紹介。

〇ジャケット
銅(82~90%)と亜鉛(10~18%)を含む銅合金で弾頭の外側を覆う。

〇スリーブ
ジャケットと中央の弾芯部の間に生じる空間には鉛(98%)にアンチモン(2%)を加えた鉛合金(硬鉛)が充填されている。

〇弾芯
中央には長さ16㎜、直径6㎜の鉄製弾芯が収まる。

〇曳光剤
弾芯の後方に配置された銅合金の筒には曳光剤が充填される。黄・緑・橙・赤・白の5色(曳光色)と数段階の明るさの組み合わせによって曳光剤は様々な種類がある。

〇樹脂製のフタ
薬莢内の発射薬に含まれる水分から曳光剤を保護・密閉するため塩化ビニール製のフタが曳光剤ケース底部に取り付けられる。

〇金属製ディスク
弾頭底部に配置されたドーナツ型の円形ディスク。スチールやマグネシウム合金製。燃焼した曳光剤を効率的に弾丸後部へ流す効果がある。




雷管周りが青で塗装されている尖頭鉄弾芯(S.m.E.  ※Spitzgeschoss mit Eisenkern) のカットモデル。弾頭内部には鉄製の弾芯が配置されている。1943年頃から大量生産が行われた本弾薬は原料の枯渇が心配された「鉛」の使用量を抑える目的で開発された。s.S.(重尖頭弾)よりも弾頭重量が1.2グラムほど軽く、鉛よりも固い鉄弾芯ゆえに貫徹力の向上という徹甲弾のような性質も持ち合わせてはいるが、これは副次的な効果であり「鉛の代用」が主目的である。



弾頭内部の多くを鉄弾芯が占めており、鉛の使用量が少ないことは一目瞭然。徹甲弾ではないので弾芯の鉄は炭素が少ない軟鉄が使われている。



1938年にドイツ軍兵士向けに発行された小火器弾薬に関するリーフレットに掲載された弾薬のイラストをいくつか紹介。まずは第二次大戦中の標準弾となったs.S.(重尖頭弾)とI.S(軽量尖頭弾)。




S.m.K. は鋼鉄弾芯の尖頭徹甲弾、Platz Patrone 33 は弾頭が木製で作られた空砲弾、Exerzier Patrone は外見形状だけが再現された模擬・訓練弾。




L'spur は昼間用曳光弾を表し、S.m.K.L'spur は尖頭徹甲弾/昼間用曳光弾、I.S. は軽量尖頭弾/昼間用曳光弾を示す。弾頭の底部に曳光剤が充填されている。


7.92×57mmの弾頭
ケースから引き抜いた弾頭。磁石が付くので鉄芯弾頭と思われる。後部が絞られた形状(ボートテール)の弾頭は空気抵抗を軽減させ射程距離を伸ばす効果がある。




発射薬はニトロセルロースを主成分とした無煙火薬。装薬量はs.S.弾の場合、真鍮製薬莢が2.85g、スチール製薬莢が2.75gとなる。



発射薬のクローズアップ。形状は正方形だが若干のバラつきがみられる。下側は一目盛り1㎜を示す。

後ほど紹介している紙箱ラベルには発射薬1粒のサイズが表記されており、そこには(縦:2×横:2×厚さ0.45㎜)とあるが実測では縦横が1.2㎜~1.5㎜、厚さは0.25~0.35㎜程度となっている。




真鍮製薬莢の底部を見る。薬莢底部にはさまざまな情報があり、弾薬がどのような種別のものか識別することができる。弾薬製造に関わる多用なメーカーや弾種を表す各種コード表示は多種にわたり、これだけでも専門書ができるほどである。

■「P635」は製造メーカーを表す。1941年以前では主に「Pコード」と呼ばれるローマ字の「P」を頭文字に数字などを組み合わせたものが使われる。
P635:Gustloff-Werke、Otto Eberhardt Patronenfabrik

■「S*」は薬莢の素材が真鍮製であることを示す記号。

■「41」は生産ロット。

■「39」は1939年の製造である事を示す。

雷管は周囲3か所が潰されて抜け落ち防止の加工が施されている。
また刻印以外にも雷管周りに付けられた色から弾種が判別できる。
写真の弾薬は「緑色」なので重尖頭弾(Patronen s.S. ※第二次大戦の標準弾)を示している。

この弾薬は15発入紙箱のラベル(詳細はこちらにも掲載)からさらに細かい情報が確認できるので以下に記す。



■弾種
Patronen s.S.  重尖頭弾

■ローディング
弾薬の製造(ローディング)メーカーはP635(※Gustloff-Werke、Otto Eberhardt Patronenfabrik)、生産ロット番号36、1939年製

■発射薬
ニトロセルロース(小銃用)で、一粒のサイズが2×2×0.45mm。製造メーカーはRdf(※Westfaelische-Anhaltische Sprengstoff A.G.)、生産ロット番号24、1939年製。

■薬莢
真鍮製(銅 72% 亜鉛 28%)、製造メーカーはP635、生産ロット番号41、1939年製。

■弾頭
製造メーカーP635、生産ロット番号16、1939年製。

■雷管
Zdh.88は1888年から使用されている第二次大戦中のもっとも多用された雷管でカップは真鍮製。雷管内の起爆薬には水銀を含み腐食性がある。製造メーカーはS.K.D(※Selve-Kornbegel-Dornheim,A.G.)、生産ロット番号873、1939年製。



1942年の真鍮製薬莢。「dnf」のコードから製造メーカーは Rheinisch-Westfälische Sprengstoff A.G.。薬莢周囲が赤なので尖頭徹甲弾(鋼鉄弾芯 ※S.m.k.)となる。



弾種識別のため幅5㎜のストライプ塗装が施された薬莢底面。緑は軽量尖頭弾(アルミ弾芯 ※I.S.)を表す。

ドイツ軍では弾頭の塗装・ストライプ、雷管の色や薬莢底部の塗装、薬莢の色などを組み合わせることで多種多様な弾種を識別させている。




1940年製のスチール製薬莢の底部を見る。

■薬莢の製造メーカーがPコードで表記されている。
 P25:Metallwarenfabrik Treuenbritzen GmbH

■「VIIg1」は3つの要素が組み合わさっており、「VII」 と 「g」 と 「1」に分解して読み解く。

 「VII」  この表記はローマ字ではなくローマ数字なので「ブイ・アイ・アイ」ではなく「7」を表し、鉄製薬莢の製鉄所を示す。ローマ数字で「I」※1から「XXIV」※24まであり「VII」は「Bochumer Verein fur Gusstahlfabrikation A.G.」というメーカのようだ。

 「g」  薬莢表面に施されたメッキの加工業者を示す。ローマ字の小文字を使い表記される。「g」は「Hirsch Kupfer-u. Messingwerke A.G.」を表す。

 「1」  鉄製薬莢の成分表示。1、2、3、4、6、8、9、10、11、12、15、17がある。
 「1」の場合、炭素:0.15~0.22%、マンガン:0.4%、ケイ素:0.12%、リン:0.03%、硫黄:0.03%が含まれる。

■「31」と「40」はそれぞれ、生産ロットと生産年(1940年)。

雷管の周囲に塗られた緑色はs.S.(重尖頭弾)を表す。




1944年に生産された真鍮製薬莢。

■「auy」は製造メーカーコード。前記で紹介したPコードに代わるもので、主に1~3文字のローマ字で表記される。
auy:Polte Armaturen und Maschinenfabrik A.G.

■「S*」は真鍮製薬莢。

■「17」は生産ロット。

■「44」は1944年製を示す。

雷管は従来の真鍮製カップを使った「Zdh.88」から、スチール製カップに亜鉛メッキを施し水銀不使用となった「Zdh.30/40」が使われている。




7.92×57mmの刻印

スチール製薬莢3種類の底部。

■「tko」 「fva」は製造メーカーコード。
tko:Waffen- und Munitionsfabriken A.G.
fva:Draht-u. Metallwarenfabrik GmbH

■「45」 「43」 はそれぞれ1945年、1943年の製造年。

■「- St+」 「St+」 は薬莢ケースの素材を示す。
- St+ :スチール製ケースでラッカーコート仕上げ、雷管のフラッシュホールが大型の1つ穴タイプ。
St+ :スチール製ケースでラッカーコート仕上げ。フラッシュホールは2つ穴。

■「3」 「2」 「31」 は生産ロットを示す。


雷管は周囲3か所の抜け落ち防止の加工があり、「Zdh.30/40」が使われている。
また左側と中央の雷管周囲には弾頭に鉄製弾芯が使われていることを示す青に着色されている。




9㎜パラベラム弾などの開発を行い、古くからドイツの軍事産業を支えたDWM(Deutsche Waffen und Munition Fabrik ※ドイツ武器弾薬製造社)が製造した薬莢。他の薬莢とは異なり、製造メーカーと製造年(1937年)の刻印しかない。



さらに、8㎜モーゼル弾6種類の刻印を参考までに紹介。経年変化ですべてグレーに変色しているが、本来は真鍮色に輝いていたと思われる。

「C」が製造メーカーコード(Munitionsfabrik,Cassel)、「S67」は銅の含有率が67%の真鍮が使われた薬莢、「18」と「10」は1918年10月製造を表す。



1918年10月に製造、メーカーコード「DM」は Deutsche Waffen-u.Munitionsfabriken 。



1924年に製造された真鍮製薬莢。「P」は Polte-Werke。「10」は製造月か生産ロットと思われる。



「Z」は Zbrojovka Brno を示しポーランド製。「19」と「36」で1936年製。「VII」はローマ数字の7で生産月を表す。




動物のような形をした刻印はポーランドの国章。製造メーカー「N」は Panstwawa Wytwornia Uzbrojenia を示すポーランド製。1939年製で「67」は生産ロットと思われる。一つ上の例からもポーランド製薬莢には薬莢の素材を示す表記が無いがどちらも真鍮製。




他国で使用されていた弾薬との比較

当時各国で使用されていた主な小銃弾との比較。8mmモーゼル弾は弾頭重量が最も重く、最も運動エネルギーの大きい、威力の高い小銃弾であることがわかる。 写真左から

■ドイツ 8mmモーゼル弾(7.92×57mm)
弾頭重量:12.8g  初速:785m/s  エネルギー:3944J

■アメリカ 30-06スプリングフィールド弾(7.62x63mm)
弾頭重量:9.8g   初速:835m/s  エネルギー:3416J

■イギリス 303ブリティッシュ弾(7.7×56mmR)
弾頭重量:11.3g  初速:740m/s  エネルギー:3093J

■ソビエト 7.62x54mmR弾
弾頭重量:9.7g   初速:865m/s  エネルギー:3629J

■日本 九九式実包(7.7mm×58)
弾頭重量:11.8g  初速:730m/s  エネルギー:3144J

■日本 三八式実包(6.5mm×50SR)
弾頭重量:9.0g   初速:762m/s  エネルギー:2612J







7.92×57mm 5発クリップ

5発をまとめる金属製のクリップ。小銃の射手は弾薬をバラで持ち運ぶことはせず、基本的にはこのクリップで5発まとめたものを弾薬ポーチへ収納する。このクリップごとkar98kのレシーバー上部の溝に差し込むことにより5発の弾薬を素早く装填することができる。








クリップには製造メーカーコードや製造年が刻印されている。写真左側の3つは真鍮製、右側の5つはスチール製で表面仕上げが異なっている。写真左側から順に、

■「P」  Polte-Werke

■「P25」  Metallwarenfabrik Treuenbritzen Gmbh

■「△30」  メーカー不明 ※ドイツ製ではない可能性も...

■「P416-37」  Loch & Hartenberger 1937年製

■「P635-39」  Gustloff-Werke、Otto Eberhardt Patronenfabrik 1939年製

■「P208.40」  メーカー不明 1940年製

■「ghx / 44」  メーカー不明 1944年製

■「hre 44」  メーカー不明 1944年製




クリップの側面には各種装填用のローダーやKar98kの機関部に差し込んだ際にストッパーとなる突起が設けられている。突起の形状やサイズは微妙に異なっている。


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