■8.8cm砲弾 薬莢底部の刻印


真鍮製薬莢3本の刻印を見る。







「1936」年製造、「P94」の製造メーカーコードは Kubel und Metallwerk Neumeyer を示し、「WaA238」または「WaA258」の旧デザインバッフェンアムトコードも詳細不明ながら同じメーカーを指すと思われる。「6347」はこの薬莢に与えられた設計番号のため、他の薬莢にも刻印されている。ドイツで設計された薬莢には6000番台が付与されているようだ。「49」は生産ロット。







「1938」年製造、製造メーカーコード「P456」は不明だが「WaA579」は Metall und Eisen GmbH を示す。生産ロットは「4」、「6347 8.8cm Flak 18」の刻印がある。







「1939」年製、「P319」から製造メーカーは Maschinen für Massenverpackungen。「WaA702」?と読めそうな不鮮明なバッフェンアムトの刻印は2度打ちされている。生産ロットは「42」、「6347 8.8cm Flak 18」の刻印。








こちらは精巧なダミー弾頭が付いた独軍オリジナルの鉄製薬莢(リペイント品)。8.8cm砲弾は第二次大戦中にドイツからフィンランドへ売却されており、未使用のまま保管されていた砲弾の薬莢が市場へ放出された。ここで紹介している薬莢はこの放出品。

フィンランド軍から放出された薬莢はライトグレイの表面処理が施され透明ニスのような塗料が塗布されていた。独軍オリジナル鉄製薬莢は錆防止の下地処理として亜鉛メッキ(グレイ)が施されていたとする資料があり、本薬莢にもライトグレイの表面処理が確認できる。鉄製薬莢はメッキの上から塗装が施されていたようであるが色味などの詳細は不明。博物館などに現存する砲弾を見ると、ダークグレイか緑がかったグレイのような微妙な色で塗装されている例が多い。

写真は徹甲弾(8.8cm Panzergranatpatrone 39)で弾頭の色は黒。暗闇で弾頭位置を明示するため、弾頭先端から40㎜の範囲が白で塗装されている。




薬莢底部の刻印からドイツ製であることは確認できるものの刻印が非常に薄い。1943年製造を示す「43」、「8.8cm Flak 18 (8.8cm 30 St)」という文字がかろうじて読み取れる。




赤矢印で示した凹みは「傷」ではなく、薬莢の再利用を示すマークの可能性がある。この処置は真鍮製薬莢も同様で再利用品には薬莢底部にポンチで凹みを付けるようだ。本品は2か所に打ってあるため2度回収された薬莢かもしれない。




■ケースへの砲弾収納


籐製ケース(全長970㎜)と砲弾のサイズ比較。徹甲弾の全長は874㎜、弾頭がより長い榴弾(写真無し)の全長は935㎜。





砲弾は弾頭側から入れる。逆向きは不可。差し込んだ砲弾は薬莢リム部の凸と木材フレームが当たるよう設計されており一定位置で止まる。













弾種によっても異なるが8.8cm砲弾1発の重量は15㎏ほど。砲弾ケースに3発を収納すると重量は55㎏を超え一人での運搬は困難になる。



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