■Z.F.41(Zielfernrohr 41)
ZF41は外観・内部形状の違いから3つに分類できる。本項では最初の量産型を1型、内部構造は1型に近くエレベーションリングが大型化するなど主に外観形状が変更されたタイプを2型、外観は2型と同一だがレンズ枚数が減り内部構造が簡略化されたタイプを3型(ZF41/1)とし、1型と3型を紹介する。
この写真では上2つが3型(ZF41/1)、下が1型。1型は全長が3.5㎜短く、エレベーションリングの幅が狭い、接眼レンズ周りの鏡胴形状が異なる、対物レンズ部分の外径が細いなどの特徴がある。
■上下調整(エレベーション)
滑り止めのローレット加工が施された本体中央のリングを左右へ回転させる事により、照準器内部のT字型レティクルが上下に動く。射距離に応じて100mから800mまで、50m毎に調整が可能。
2型以降で改良され大型化した調整リングは操作感が向上している。
エレベーションリングの周囲に刻まれた凹み線に板バネ(2本のマイナスネジで固定)が当たることで「カチッ、カチッ」としたロックが掛かり、所定の回転位置を保持する。
■照準調整(ゼロイン)
ZF41を使う前の照準調整(ゼロイン)は対物レンズを直接回転させて行う独特の方式を採用。
内部構造を理解するために鏡胴前部を分解。ネジが切ってある対物レンズ固定リングを外し、スリーブを外す。
内部には固定されていない状態の対物レンズ鏡胴が収まる。
この鏡胴は2部品に分かれる。左は対物レンズが固定された鏡胴、右は筒状の部品。筒の外周に等間隔で並ぶ穴は、後ほど紹介する調整棒差し込み用。
対物レンズは中心軸を僅かにずらした状態で鏡胴に固定されており、この鏡胴を収納する筒もまた偏芯している。2つの偏芯している筒をそれぞれ回転させることで対物レンズの位置を移動させて照準調整を実現している。また、射撃中にウィンデージ(左右)調整が簡易に行える機能は備えていない。
具体的な調整方法。
まずはZF41を装着したKar98kを動かぬよう固定し、エレベーションを100mにセット。100m先の標的に対して5発射撃。ここでレティクルのど真ん中に当たれば調整は不要だが、たいていはズレが生じるので照準調整を行う。
外側のスリーブを固定しているマイナスネジを外し、対物レンズ固定リングを緩める。スリーブを回転させ、鏡胴のスリット位置に合わせる(写真の状態)。
調整棒を差し込み、左右へ回転させながらレティクルの中央が標的の弾痕と重なる位置になるよう調整する。写真左のスリットは対物レンズが固定された鏡胴を、右が鏡胴を収める外側の筒をそれぞれ調整できる。
このような構造を持っているZF41は対物レンズが鏡胴中央にあるとは限らず、写真のように左右上下に偏っている場合もある。またこの写真では1型(左側)の鏡胴外径が一回り細いことも確認できる。
■ZF41を分解する
鏡胴や調整リングなどはスチールの削り出しで製作されており部品精度は高い。部品ははめ込み、またはネジ込み後、極小のイモネジで固定する。
9割ほどが分解された1型のZF41。グリスなどの固着さえなければ分解は比較的容易。
非常に小さい部品で構成されているZF41。レティクル線は髪の毛よりも細く、レンズに印刷されているようだ。
レティクルレンズがはめ込まれたプレートと接する調整リング内側は楕円形に加工されており、調整リングの回転に合わせてレティクルが上下に動く単純な仕組み。
■ZF41を覗く
倍率1.5倍、「T」字型レティクルが採用されている。
写真では大きく見えるが、実物の接眼レンズ外径は15㎜しかなく、接眼距離は30cm以上離れているため小さく見える。3型はレンズ枚数が減っているが見え方は1型と同じ。レンズ枚数の影響か3型の方が少し視野が明るく見える気がする。
実際にZF41を覗いた印象は下記の通り。
○長所
・銃付属の照準器に比べ明らかに狙いが定めやすい。
・遠距離目標の視認性が向上する。
・アイリリーフが長いため周囲の状況を確認しやすい。
・像とレティクルは共にシャープで周囲まで鮮明。
○短所
・視野がかなり狭い。
・像が暗く、夜間はもちろん、目標が薄暗い状況下では使えない(目標がよく見えない)。
・低倍率ゆえに遠距離の小さな目標は捉えにくい。
ZF41を使って写真中央にある赤い灯台(距離は約850m)を狙う。
1.5倍という長距離の精密射撃には向かない低い倍率のため灯台も少し大きく見える程度ではあるが、射撃精度の向上と狙いを定めるまでに要する時間の短縮は確実な効果が期待できる。
写真左は射距離100m、写真右はエレベーションリングを操作して射距離800mにセットした状態。800mではレティクルが視野内で大きく下がるため、照準はやや窮屈になる。