■DF10×80 (2重望遠鏡) その1














DF10×80の右側光学部は筐体に固定されているが、左側光学部は眼幅調整のため全体が左右に可動する構造となっている。外装を構成する基本部品は5つとシンプルで、全長は30cm未満に収まっている。軽量化を図るため主要部品はアルミ製。

本体は対物レンズが収まる筒の外側を除き、下地塗装(赤茶)の上にRAL7028に準じたダークイエローで塗装されている。製造年の表記は無いが、塗装色とグリス刻印から1943年2月以降の生産品と推測することができる。

防塵・防滴構造では無いものの、主要部品の接合部はグリスまたはシール剤が塗布されており簡易ではあるが防塵・防滴に近い構造を実現している。一方で、このグリスに含まれる成分は経年により揮発する傾向がある。この揮発物がレンズやプリズムに付着しクモリや汚れの要因となるため現存する多くのDF10×80は光学系に汚れがある。


















対物レンズにフードを取り付けた状態。














全長 364㎜(フード無し 280mm)、幅 218mm、高さ 167mm。重量は5.7㎏。




DF10×80は主に対空監視を目的として設計されているため対物レンズと接眼レンズが45度の角度を持っている。大きな仰角で対空監視する際に見やすく、長時間の使用でも疲労を軽減できる。




機材名称「D.F. 10×80」、エミール・ブッシュを示す製造メーカーコード「cxn」、1943年以降に導入されたと思われる-40度から+50度までの温度に対応するグリスの使用を示す青色の三角形、製造番号「122317」の刻印が並ぶ。赤色の「×」は複数あるレティクルパターンのうち、3番目のパターンが採用されている事を示す記号であるという説と、グリス記号であるとする説の2つの情報がある。製造番号のような「79831」は軍の機材管理番号。

この写真では下地塗料が見えており、赤茶の色味がよくわかる。



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