DF10×80 (2重望遠鏡) / Doppelfernrohr 10×80





多数の光学機器メーカーを有するドイツはその高い技術力を背景に優れた軍事用の光学機器を開発・生産した。ドイツ軍の Dienstglas 6×30(倍率6倍・対物レンズ径30㎜)は最も一般的な双眼鏡として幅広く使用されており、対空の監視・偵察・射撃任務などに就く一部の兵員にはより高性能な Dienstglas 10×50(倍率10倍・対物レンズ径50㎜)が配備されていた。しかし、視野が広く多目的用途に使える移動式の新型大口径望遠鏡を求めたドイツ国防軍は1934年、各メーカーに開発を打診した。これにエミール・ブッシュ(Emil Busch)、ライツ(Leitz)、メラー(Moller)の大手光学機器メーカー3社が応じ試作品が製作された。以下、各社試作望遠鏡のスペックを示す。

◯エミール・ブッシュ
対物レンズ径:80㎜  倍率:10倍  実視界:7.5度  見掛視界:66.4度  1000m視界:131m  重量:6.5kg

◯ライツ
対物レンズ径:80㎜  倍率:9.2倍  実視界:6度  見掛視界:51.6度  1000m視界:105m  重量:9.25kg

◯メラー
対物レンズ径:79.5㎜  倍率:9.9倍  実視界:6.5度  見掛視界:58.4度  1000m視界:113m  重量:8.5kg

各社比較の結果、軽量と視野の広さで優れていたエミール・ブッシュの望遠鏡がDF10×80として1936年に採用された。

名称のDFはDoppelfernrohr(2重望遠鏡)の略であるがFlakfernrohr(対空望遠鏡)とも呼ばれており、10×80は倍率10倍・対物レンズ径80㎜を表す。DF10×80は対物レンズと接眼レンズの角度が45度傾斜、80度傾斜、20度傾斜の3タイプが製造されている。


◯DF10×80 対物レンズ45度

実視界:7.5度  見掛視界:66.4度  1000m視界:131m  重量:6.5kg

第二次大戦中のドイツ軍で最も多く使用された大型望遠鏡。大きな仰角が必要な対空監視任務から水平方向の監視まで、使用者に負担をかけることなく長時間使用できる。1936年から1945年の間で20万台以上が生産された。製造メーカーは以下の6社。

cxn(E.Busch 、Rathenow)
beh(E.Leitz、Wetzlar)
dkl(Schneider、Bad Kreuznach)
cro(R.Fuess、Berlin Steglitz)
bpd(C.P. Goerz、Vienna)
eug(Optische Praezisionswerke GmbH, Warsaw)



◯DF10×80 対物レンズ80度

実視界:7度  見掛視界:62.8度  1000m視界:121m  重量:9.2kg

対空監視任務に特化したタイプ。常に大きな仰角で望遠鏡を覗くことになる高空を飛ぶ航空機の監視に有利であり、アイレリーフが長いのでガスマスクやヘルメット使用時でも見やすい。製造はblc(Carl Zeiss Jena)とeug(Optische Praezisionswerke GmbH, Warsaw)の2社。



◯DF10×80 対物レンズ20度

実視界:7度  見掛視界:62.8度  1000m視界:122m  重量:11.2kg

主にドイツ海軍の艦艇に装備され、大戦後半になると陸上の沿岸観測用機器としても多数が使用された。防水機能が強化されており、内部の結露防止や湿気除去のため吸湿剤カートリッジと窒素ガスの充填ポート、大型ヘッドレストやスパイダーサイト型の照準器などが装備されている。製造はblc(Carl Zeiss Jena)とeug(Optische Praezisionswerke GmbH, Warsaw)の2社。3タイプのなかでは最も生産数が少ない。

本項では対物レンズが45度のタイプを紹介する。



■各部のディテール紹介


・DF10×80 その1

・DF10×80 その2

・DF10×80の分解 その1

・DF10×80の分解 その2

・DF10×80の分解 その3

・収納木箱 付属品 その1

・収納木箱 付属品 その2

・収納木箱 その1

・収納木箱 その2

・収納木箱 その3

・回転台

・架台

・DF10×80専用3脚



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