■回転台





DF10×80を左右方向へ動かす回転台。本体外周は水平方向への回転角度を確認できる目盛り(単位は1/6400・ミル)が刻まれており、底部には3脚への差し込み口と棒状の回転調整ノブが設けられている。回転台本体に厚みがあるのは内部にも円形の目盛り板とギヤ機構が収まっているため。外装はアルミまたはマグネシウム合金製、内部のギヤもアルミ製となっており大きさの割には軽い。







架台を載せるマウント部。




マウントへ差し込んだ架台をロックする機構。黒いノブを回すと固定ブロックがスライドする。




水平を確認できる円形水平器。



外周の目盛りは1目盛り20ミル。側面に設けられた小窓内部にも目盛り(こちらは一目盛り1ミル)があり本体目盛りとは別に回転する。双方の目盛りを合わせて見ると1ミル単位で角度を読むことができる。小窓のガラスは虫メガネと同様の凸レンズになっており、目盛り板の数字は拡大されるため非常に見やすい。













分解すると、内部機構はかなり複雑。写真には写っていないが3枚ギヤで構成された部品も収まる。回転台は底部の円形板・上部の本体カバー・内部の目盛り板から構成されており、それぞれがギヤを介して接続されているため個別に回転する。






「0・64」から「60」へ目盛が動いているので望遠鏡は左に400ミル回転したことが分かる。望遠鏡を左右に振った場合、このように外周の目盛り部は回転せず、ここから上が回転する。

DF10×80を単独で使用する場合、これらの目盛り数字はあまり意味を持たないが、複数の監視機器を併用する対空砲陣地においては1/6400の高精度で角度を読める目盛り数字が正確な目標の補足・射撃の実現に寄与する。また付属品に方位磁針があるため、磁北を方位の基準点にすることができる。




写真の金具には乾電池収納ケースを取り付ける。













3脚へ接続する回転台の下部は他のドイツ軍光学機器用3脚と同様に赤で塗装されている。ツヤありのやや厚ぼったい赤塗膜はいかにも再塗装品のように見えるが、再塗装の形跡が無いためオリジナル塗装と思われる。回転ノブの赤が他に比べて暗い色となっているのも、オリジナルの特徴であるようだ。

なお上の写真で右側にある黒いノブを締めると上部の回転をロックさせることができる。




3脚の支柱に差し込み後、固定させる蝶ネジ。




側面にマイナスネジで固定された樹脂製の白いプレート。鉛筆で重要な数字や情報を一時的に書き込むメモ欄と思われるが、文字が書き込みにくい場所に設けられている点は気になるところ。同様の樹脂プレートを用いたメモ欄は野戦電話機や間接射撃用計算尺などにも付いている。

横に突き出たノブを回すと回転台全体(赤塗装の部品は回転しない)を回すことができる。







回転台下部に収まる高精度なギヤ。小型光学機器の付属品を構成する部品としては過剰品質だろう。しかし、製造コストや時間よりも品質を優先した80年前の機械はこのような部品で構成されているからこそ魅力に溢れている。




製造メーカーコード「dkl」とグリス記号?の「〇」が上面に刻印されている。dkl は1913年にドイツで創立したレンズメーカー シュナイダー社(Schneider, Bad Kreuznach)を示し、このメーカーはDF10×80の本体も生産している。




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