■サドルドラムマガジン・DT-15
レシーバー上面にまたがるように装着する姿から「サドル(鞍)ドラムマガジン」という名称が一般的。ベルトリンクで結合されていないバラ弾薬を収納し、内部のスプリングによって弾薬を押し出す機能は一般的なマガジンと同じであるが、弾薬を渦巻状に収納し、かつ左右に振り分けて配置しているため、独特の外観となっている。この配置によって、左右の弾薬重量バランスが均等になる、装弾数が多いという利点の一方、複雑な構造、重量が重い、素手による装弾が困難、ベルト弾給への素早い切り替えができない、などの欠点も多い。
DT-15は主に航空機搭載用の機関銃として開発されたMG15用のサドルマガジン。MG15はDT-15とその後に開発されたPT-34以外の給弾方法がなく、サドルマガジン専用の機関銃となっている。
装弾数75発。主要外装部品はスチールのプレス製。DT-15のほとんどが黒の塗装仕上げ。サイズは横267×幅108×高さ124㎜(金具の突起を含む)。弾薬未装填時の重量2.38kg。75発フル装填時で4.4kg。
マガジン背面には残弾確認用のスリットが設けてある。右側の0、25、50、75と25発毎の赤色で表示された数字は左右合計の残弾数を示し、スリットから残弾が確認できる。左側は0、75発の2か所のスリットのみ、数字の刻印も無い。
「残弾無し」の状態。左右のスリットにはアルミ製の弾薬型マガジンフォロアーの底部が見えている。
中央部は内部に配置された渦巻バネの中心軸が通る。DT-15への弾薬装填時にはこの軸に装弾ツールを差し込む。この部分はPT-34と形状が異なっており、両者を識別できる数少ないポイントの一つ。
DT-15の前部。4本のマイナスネジは渦巻バネを収納する筒の固定用。こちら側の中心軸もPT-34と差異がある。
上面に設けられたキャリングベルト。このベルトは本革であるが布製、合皮など複数のバリエーションがみられる。
中央に配置されたT字型の部品はマガジンリリース金具。
MG34のサドルマガジン専用フィードカバーと嵌合するマガジン固定金具。
弾薬の給弾口。マガジンリップの形状などは一般的なボックス型マガジンと同じ。マガジンフォロアーは弾薬型、残弾無しを示す「0」の刻印が打たれている。
マガジン上部の刻印。製造メーカー、Hugo und Alfred Schneider AGを示す「HASAG」のロゴマークと1939年製造を示す「39」。「D-T15」の名称、「Nr」は番号の意味でその後に続く「158 w 8」の製造番号を指すと思われる。「Fl 46300」はドイツ空軍でDT-15を示す品目管理番号となっており、多くのDT-15で同じ刻印が確認できる。
外側にある各部の刻印を紹介。背面プレート上部の左側には本体と一致する製造番号「158 w 8」と「HASAG」のメーカーロゴ。
背面プレート上部の右側には「64」のドイツ空軍承認マーク。
背面の中央部(給弾口の後部)。上下逆さ「64」の空軍承認マーク、その上には異なるデザインの空軍承認マークが打たれている。
前面パネル右側。渦巻バネ軸の斜め上に空軍承認マーク。幅3㎜弱の小さく薄い刻印のため、塗膜が厚いと発見できない。
前面パネル左側。渦巻バネ軸の左に「64」の空軍承認マークがあり右側とは異なるデザイン。こちらは幅2㎜弱とさらに小さい。
こちらは別のDT-15。製造メーカーコード「awt」は Wuerttembergische Metallwarenfabrik AGを示し、1940年製。製造番号は「39067 C」で背面パネルの製造番号も一致している。上部のキャリングベルトは合皮製。
さらに別のDT-15から上面刻印のみを紹介。製造年の数字が見当たらないが右端の「K」は1934年製を示し、初期に生産されたDT-15となる。6の数字が打たれた旧デザインバッフェンアムト、〇と△の中にSが打たれた刻印はともに製造メーカー Simson を示す。「261f」はシリアル番号。
バッフェンアムトの刻印は1935年以降、ドイツ空軍の刻印へと置き換わる。