■Dienstglas 6×30 その4



■フォークトレンダー製 1943年末以降生産品














グリス記号の刻印から1943年末以降の生産品。ダークイエロー(RAL7028)での塗装、各部の省力化、筐体の材質が変更されているなど後期型 Dienstglas 6×30 の特徴を有している。







塗装色以外の大きな差異が重量。本サイトに掲載している4点の黒いDienstglas 6×30はすべて370〜380g前後の重量であるが、本個体は654gと1.7倍も重い。これは筐体の材質が軽量なマグネシウム合金から亜鉛合金?に変更されているため。筐体以外の部品は従来通りのアルミが使用されているため、重量増の要因ではない。

大幅な重量増となった後期型のDienstglas 6×30だが同様のスペックを持った全金属製双眼鏡としては標準的な重量であり、ドイツの光学機器製造技術が遺憾なく発揮された前期のDienstglas 6×30が軽すぎたともいえる。




「Dienstglas 6×30」、製造番号「354744」、製造メーカーコード「ddx.」は1756年にオーストリア・ウィーンで設立した老舗光学機器メーカー、フォークトレンダー(Voigtländer & Söhne A-G)を示し、「△」は1943年末以降に採用されたグリスの使用を表す記号。

レティクル表示に関する刻印は無く、本個体にはレティクルレンズが無い。接眼レンズ周りは過去に分解された形跡が確認できない(小さなイモネジ取り付け部のパテ埋め処理が残っている)ため製造時からレティクルレンズは装着されていないと思われる。




筐体表面の「滑り止め処理」は完全に省略。金属部は赤茶の下地塗装がなく、そのままダークイエローが塗装されている。







対物レンズ周りの構造や材質は前期型と同じ。レンズコーティングは無し。










接眼レンズ周りは外装部品が一部省略されている。ベークライト製の目当ては製造当時のオリジナル。













材質が変更され滑り止めも廃止された筐体。しかし、内部は反射防止の黒塗装が丁寧に施されプリズム固定基部の加工も高精度。「見え方」に影響する内部は手を抜くことなく、高い品質が維持されている。見え味も大変に素晴らしく、大戦前に製造されたカールツァイス製と同等かそれ以上に見える。



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