■ベークライト製 Dienstglas 6×30の分解 その2





ベークライト製筐体は、対物レンズ側、中央、接眼レンズ側の3部品に分かれる。金属製筐体では直角プリズムと対物・接眼レンズの取り付け基部が中央部品に集約されていたが、ベークライト製では対物レンズ側と接眼レンズ側にこれらの光学部品が取り付けられる。










対物レンズ側部品。3本のマイナスネジで筐体中央に固定する構造は金属製と同じだが、ベークライト製はさらに2本の小さな金属棒を設けて位置ずれを防止している。






4箇所の突起で保持し、簡易なスチール金具で固定されたプリズム。いかにも精度が悪そうな貧弱な見た目で末期生産の雰囲気が漂う。






プリズムの下には「4/129 br」、樹脂の種類を示す材料検査マーク、製造メーカーコード「boa」がモールドされている。
















接眼レンズ側。こちらもプリズムの固定方法は対物レンズ側と同じ。ベークライト部品同士の接合部には固着した樹脂かグリスのようなものが付着している。これは防滴や防塵を目的としたシール材の可能性があり、金属製筐体でも接合部には同様の処理が確認できる。




右の光学系だけに装着されたレティクルレンズ。アルミ製の枠にレンズがはめ込まれている。レティクル線は極小なのでこの写真サイズでもほぼ見えない。現存するベークライト製も一部にレティクルレンズ無しが存在するものの、製造時から無かったのか、戦後になって誰かがレティクルレンズを外したのかは不明。




レティクルは金属製筐体と同じ。1目盛り5ミル。








筐体の中央部品。徹底的な重量削減と限られた内部空間に大きなプリズムを納めるため金属製筐体は一部がかなり肉薄の形状になっている。ベークライト製では筐体の厚み増して強度不足を回避しているため、全体のフォルムが僅かに大きくなっている。

ベークライト表面はガサガサしておらず、多少の凹凸はあるものの滑らかに成形されている。室内の照明下ではこげ茶だが、屋外の太陽光下では赤味を帯びた明るい茶色に見える。












戦争末期の樹脂製筐体となれば、その見え味がどの程度なのか興味が湧く。これまでの内部写真を見る限り、あまり期待はできそうにないのだが、見え方は金属製筐体のDienstglas 6×30と同じで性能低下は無い。製造から80年近くを経てなお優れた光学性能を発揮するのには驚く。1943年以降に生産されたカールツァイス製Dienstglas 6×30と比べ、僅かにコントラストが低いような気もするが、比較しなければ違いは分からない。

金属製筐体に各部品を固定するような精度はおそらく無いため、組み立て時の念入りな光軸調整で精度を確保しているものと推測する。



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