■Dienstglas 6×30 の分解 その1


掲載するDienstglas 6×30とDienstglas 10×50の光学系に大きな汚れは無かったが、80年という経年によるゴミやクモリの付着は避けられないため、完全分解し内部を清掃する。
「部品点数が少ないので分解は簡単」と思いきやDienstglasの分解はハードルが非常に高い。

・レンズ筒などがかなり強くネジねじ込まれている。
・ネジ接合部やカバー内側に塗布された黒いシール材、またはグリスがガチガチに固着している。
・特に接眼レンズ群が収まる筒は薄く変形しやすい。
・レンズ筒は外側がツルツル形状のため工具でガッチリと保持することが困難。

これらの理由によって部品の取り外しという点では測距儀や砲隊鏡よりも難しい。

難関は対物レンズ筒と接眼レンズ筒の取り外し。ゴムなどのすべり止めを挟み工具で回す、接合部に熱湯をかけ温める、灯油系の溶剤を染み込ませてネジの固着物を溶かす、など色々試したが外れない。そこでゴムの輪を使ったキャップオープナーを使ったところ、すべての部品をキズを付けず外すことができた。

※分解途中の写真は「bmk」生産品を掲載。







予想外の威力を発揮したキャップオープナー。長さ調整可能なゴムバンドと樹脂製グリップがある簡易な構造、近所のホームセンターで1,000円ほど。これが無いとDienstglasは分解できなかった。




本体にネジこまれた接眼レンズ筒。ここもキャップオープナーで回すがアルミ製の筒はフチが薄く簡単に変形してしまう。一つ前の掲載写真のように必ず接眼レンズ鏡胴を中に入れて変形を防ぐ。







対物レンズは保護リング、レンズ筒共にネジ込まれているだけなのでキャップオープナーで回して外す。




左が対物レンズ筒、右が保護リング。写真は清掃後であるが、取り外し直後は固着した黒いグリスまたはシール剤が大量に付着している。







写真左から対物レンズ筒、レンズ鏡胴、光軸調整用偏芯リングで構成。組み立て後、偏芯リングを回転させることで対物レンズ中心軸を移動させ左右視野のずれを調整できる。




戦前と大戦前期にカールツァイスで生産された個体には対物レンズの後方に筒が設けられている。この部品の廃止時期は不明だが少なくとも1943年末以降の生産品には無い。










対物レンズから入った光が筐体内部で不必要な反射を防ぐための遮光筒。内部には繊細な溝が加工されている。




接眼レンズを本体から分離させるには赤矢印で示したリング部品を取り外す。ここだけは「逆ネジ」なので、緩める回転方向に注意。ネジ込まれているだけの部品だが取り外しが難しく、キャップオープナーが活躍する。










リングを外せば接眼レンズ鏡胴が簡単に取り出せる。ピント調整リングを固定する小さなスチール製イモネジを除き、アルミ部品となっている。







筐体にネジ込まれている接眼レンズ筒は変形に注意しながらキャップオープナーで回す。







レティクルレンズは右側接眼レンズ筒に配置される。ガラス表面に刻まれたレティクル線は小さく線が薄いため、肉眼ではほとんど見えない。







接眼部を構成する各部品。




ベークライト製の目当て。


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