■ドライバイン34 初期型 その1








基部と脚などの主要構造物がマグネシウム合金(マグネシウム90%、アルミニウム10%)、強度が必要な支柱や脚のロック部分はスチール素材となっている。ドライバイン34には製造年の刻印が無く、いつ生産されたものか確認することができない。MG34の部隊配備開始と同時期と思われるため、生産開始は1934年~1935年と推測される。

折り畳んだ状態での高さは100cm、上の写真の脚を開いた状態で高さ93.5cm。重量は6.6kgで後継となるオールスチール製のドライバイン34と比べ1.6kg軽い。

初期型ドライバイン34は現存数が少なく海外市場でも高騰している。マグネシウム合金は腐食しやすいため、状態良好な品も少ない。掲載品はマグネシウム合金表面に腐食による白い付着物があり、スチール部品は赤錆が浮くなどかなり悪い状態に見えたが、腐食や錆は表面のみに留まっており素材としての状態は良好だった。レストアのため主要部品を分解し丁寧に洗浄、再塗装や黒染めを行った。




独軍マニュアルに掲載された初期型ドライバイン34。1940年11月に発行されたマニュアル(Wa30/31)には以下の説明がある。

【ドライバン34】
ドライバン(Dreibein)は航空目標への射撃や2脚(Zweibein)では高さの足りない場合の地上目標への攻撃に使用する。地上目標への射撃では前方支持または中央支持の両方、航空目標射撃では中央支持のみを使用する。3脚の脚部は展開及び伸縮可能であり、伏せ撃ちから立射に至るまで、さまざまな姿勢に対応できる。高さの微調整は調整可能な上部マウント(銃架:Aufsatz)で対応できる。運搬用のスリング(Trageriemen)は射手が3脚を持ち運ぶ際に肩にかけるために使用する。




地上目標射撃時など水平に近い射角の場合、脚の開き角度を大きく取れば低い姿勢でMGを保持できる。また3本の脚はできる限り大きく開いた方が3脚は安定し命中率の向上が期待できる。




製造メーカー「G.Appel」 (Gustav Appel Maschinenfabrik)を示すロゴ。リンゴの輪郭の中にAとGがデザインされており、果物をモチーフにしたロゴは珍しい。このロゴはドライバイン34の各所に打たれており、確認できるだけでも15か所ある。

ドライバイン34の生産は初期型・スチール製のすべてを「G.Appel」一社で行っていたようだ。




写真右はRk31などの小型光学機器を載せる3脚(Kleines Gestell 31)。サイズは大きく異なるが各部の基本構造は同じでこちらも主要部品はマグネシウム合金製。




レストアのため塗膜を剥がした脚。長さ調整が可能な3本の脚は一部の部品を除き、マグネシウム合金製で軽い。











伸縮を調整する金具が付いた脚の下部。








レバーを緩めると収納されている脚が引き出せる。






脚は最大で57.5cm伸びる。脚を広げた写真の状態で高さは147.8cm。










脚の伸縮を調整するスチール製金具。






スチール部品の表面に打たれた「WaA500」のバッフェンアムトはG.Appelを示す。手持の資料には「WaA500」は1937年~1938年の期間で使用されたとある。つまり本個体の製造年が37年または38年の可能性がある。他にも不鮮明で読めない刻印が打たれている。




バッフェンアムトが打たれているスチール製部品には「G.Appel」を示すロゴが確認できる。








先端はすべり止め防止に尖っており、地面への埋まりを防ぐ円形の金具が付いている。円形金具の一つはオリジナル品ではなく、代替品に交換されている。



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