■作動機構 その2
FG42はセミオート射撃:ボルト閉鎖位置(クローズドボルト)から、フルオート射撃:ボルト後退位置(オープンボルト)から射撃が始まるという独自の機構を持っている。機構が複雑化するにもかかわらずこの機構を採用した理由は以下の通り。
・クローズドボルト・・・射撃時に大きな部品が動かないので、命中率の向上が期待できる。狙撃銃としても使える精度を求める。
・オープンボルト・・・加熱しやすいフルオート射撃において常に薬室、機関部が開放されており空気が流入するので冷却効果が期待できる。また、高温になった薬室内の弾薬が勝手に発火する現象「コックオフ」を防止できる。FG42は銃身交換ができないため、連射による銃身の温度上昇をできる限り抑える方式を採用した。マイナス点としては射撃直前に質量の大きなボルト部品が動くので銃がぶれやすく命中率の低下を招く。
「極めて複雑な構造」と思いきや、FG42のトリガー機構は部品点数が少なくシンプル。同時期に開発されたMP44/Stg44は分解をためらうほど複雑な構造であり、これとは対照的。
独自のセミ・フル切り替え機構を実現する要となるのがシアー(B8)とトリガーレバーベアリングと呼ばれるB12の部品。通常のシアーはトリガーの動きに連動し上下に動くだけであるが、FG42のシアーは上下に加え、左右へ回転する構造となっている。
B8aがシアーの突起、B9はセミオート射撃時のみ機能するディスコネクター(トリガーとシアーの機械的連動を一時的に断ち切る部品)。
ショウエイのモデルガンはトリガーメカも実物そのままの再現度。
シアーに組み込まれたトリガーレバーベアリング(モデルガンでは真鍮製)。この部品はシアーをグリップフレームに固定するためのセレクターピン(B13)が貫通し、軸が左右へ回転できる構造がわかる。
セミオート/フルオートを切り替えるセレクターに内蔵されたピンがシアー側面を押し、シアー本体の角度が変化する。
■セミオート射撃
セレクターをセミオート射撃のE(Einzelfeuer)に設定する。
セレクター内部に内蔵されたピン(B14)がシアー左側面を直接押す。セミオート射撃ではシアーの前方が押され、シアーの突起(B8a)は左側へ移動する。またディスコネクター(B9)は右側へ移動。
■フルオート射撃
セレクターをフルオート射撃のD(Dauerfeuer)へ切り替え。
セレクター内蔵ピンはシアー後方を押す。シアーの突起(B8a)は右側へ移動。左側へ移動したディスコネクター(B9)は機能しなくなる(オープンボルトのフルオート射撃時にディスコネクターは不要)。
■安全装置
セミ/フルオートのセレクターを下げる(Sの位置にする)と安全装置が掛かる。
セレクター内蔵のピンがシアー側面の穴に嵌合することで、シアーの動きを止める。トリガーを引いてもガスピストン/ボルトは作動しない。