■Karabiner 43 マニュアル
1944年5月11日にドイツ陸軍最高司令部/兵器局から発行された「Karabiner 43」に関するマニュアル。表紙サイズが10×6.8cmのマニュアルは小さく丸められてバットストック後部に収納されていた。第二次大戦も後半に突入すると兵士への教育時間を確保することが難しくなり、事前の教育なしでも前線に届いた新たな小火器を誰でも運用できるよう、またガス圧作動などの新機構の注意点を徹底させる目的で、最小限の内容を記載したマニュアルを銃とセットで配布した。
マニュアルは銃の基本情報、各部名称、取り扱い、分解、作動メカニズム、手入れ/清掃という内容で30ページ構成。「Gewehr 43」は旧名称として掲載され、「Karabiner 43」という新たな名称で紹介されている。1944年4月25日に「Gewehr 43」から「Karabiner 43」への名称変更が行われているため、掲載のマニュアルはこの名称変更を受け、従来マニュアルの改訂版として発行されたものと思われる。
ここでは「分解」を除く項目の和訳をテキスト中心に掲載する。
Karabiner 43(K 43)
小銃用照準望遠鏡4倍(Gw ZF 4-fach)付き
旧名称:Gewehr 43(G 43)
構造:
ガス圧作動の自動装填式。ストレートに前後移動するボルト、リーフ・ロック方式の閉鎖機構、ハンマー式撃発機構、および引き金安全装置を備える。
給弾方式:
10発入りの着脱式マガジン。
弾薬:
Kar98k と同じ小銃弾。
照準射距離:
100~1200m。50m刻みで調整可能。
照準装置:
U字型リアサイトと凸型フロントサイト、または4倍の小銃用照準望遠鏡。
寸法と重量:
全長:1120mm
照準望遠鏡およびマガジンを除く銃の重量:3.9kg
Kornschutz …照星ガード
Mutter …ナット
Ring …銃身帯(バンド)
Stock …前部ストック
Handschutz …ハンドガード
Visier …照門(リアサイト)
Hülse …レシーバー
Schloß …ボルト(機関部)
Zielfernrohr …照準望遠鏡
Sicherung …安全装置
Schaft …バットストック
Magazin …マガジン
Magazinhalter …マガジン止め
Abzugbügel …トリガーガード
Deckel … ボルトキャリア
Sperre … ボルトストップ
Schutzschieber … 防塵カバー
Schloßhülse … レシーバーカバー
Stützklappen … ロッキングフラップ(ロッキング金具)
Kammer … ボルト
Verschlußstück … 閉鎖カム
Stift … 閉鎖カムのピン
Schlagbolzen … 撃針
Schlagstück … 撃針体
Führungsrohr … ガイドチューブ
Führungsbolzen … ガイドボルト(ガイドピン)
Sperrscheibe … ロッキングワッシャー
lange Schließfeder … リターンスプリング・長
kurze Schließfeder … リターンスプリング・短
Zubringer:フォロア
Zubringerfeder:マガジンスプリング
Magazingehäuse:マガジン本体
Magazinboden:底板
Gewehr-Zielfernrohr 4-fach … 小銃用望遠照準器 4倍
Teiltrommel für Entfernungstellung … 距離設定用ドラム(目盛りドラム)
Schutzkappe für Seitenverstellung … 風向(左右)調整用ドラムの保護キャップ
Regenschutzrohr … レインシールド
Augenschutz- … 目当て(アイカップ)
Klemmhebel … クランプレバー(締め付けレバー)
Schelle … マウントリング
Halter … (スコープ)マウントベース
Rasthebel … 脱落防止レバー
Karabinerriemen … カービン銃用スリング
Mündungskappe 98 … 銃口キャップ 98(Kar98k用)
Schutzkappe mit Riemen … ストラップ付きレンズ保護キャップ
Magazin K 43 … K.43 用弾倉(10発)
Magazintasche K 43 … K.43 用弾倉ポーチ
(左側のKar98k用弾薬ポーチの代わりに装着する)
Karabiner 43 の射撃準備段階の区分
I. 平時の行軍・休憩中:
機関部は射撃できない状態、マガジンは空(マガジンスプリングの負荷を最小に)。マガジンはそのうち1個を銃に装着。
II. 使用準備:
マガジンは実包入り、そのうち1個を銃に装着。ハンマーは撃発できない前進位置に。
III. 射撃準備完了:
銃は装填済みで、安全装置をかける。
・使用準備状態から移行する際は、ボルトを後退させてから前進させ(初弾装填)、安全装置をかける。
・あるいは、ボルトを後退位置で止め、5発クリップを用いてレシーバー上部から装弾。その後、ボルトストップを解除して初弾を装填。
取り扱い
マガジンへの装弾:
銃から外したマガジンに、一発ずつ手で押し込んで装弾する。
または銃を用いて装弾(5発クリップでレシーバー上部から)してもよい。
その手順:
マガジンキャッチが確実に掛かるまでマガジンを差し込む。
ボルトを最後端まで引き、ボルトストップを掛ける。引き金の安全装置を掛ける。5発クリップをレシーバー上部の切り欠きに差し込み、上からマガジン内に押し込み装弾。マガジンを10発でフル装弾にする。装弾済みのマガジンを外し、残りのマガジンも同様に装弾する。
射撃
装填:
10発装弾済みのマガジンを装着。ボルトを後退、前進させ安全装置を掛ける。または装弾済みマガジンが無く、銃に空のマガジンが付いている場合、ボルトを後退させボルトストップを掛ける。安全装置を掛ける。マガジンに装弾し、ボルトを最後部まで引いて(ボルトストップを解除)前進させる。
弾薬は薬室へ送られる。銃は装填済みで安全装置が掛かっている。すなわち、安全装置を解除し、引き金を引けば発射される。
装填済み弾薬の取り外し:
安全状態のまま銃口を上向きにし、マガジンを外す。
ボルトを後退させ、排出される弾薬を回収、薬室を目視して薬室・銃身が空になっているか確認。必要に応じ安全装置を操作。
射撃休止:
銃口は上向き。
コッキングされた撃鉄(ハンマー)は引き金を引くことによってのみ解放できる。撃鉄がコッキングされていない状態で安全装置は掛けられない。状況の応じて装弾済みまたは空のマガジンを装着する。
汚れ防止:
ボルト上面のダストカバーは銃の上面を覆い保護する。
初期製造の銃ではボルトと連動して動く。新しい製造の銃では連動しない(ボルトの組立を容易にするため)。
銃の上面を閉じるには、ダストカバーを手で前方へ押し出すこと。
覚え書き:
装填に関するあらゆる動作中は、常に指を引き金から離しておくこと。
ボルトが前進位置にある銃は、外見から弾薬の有無が分からないため、常に装填されているものとして扱うこと。
分解清掃と組立:
射手が分解できるのは、ボルト・マガジン・ガス作動部。
ガス・ピストン作動部がスムーズに動かない場合、必要に応じて武器整備担当が調整する。
照準望遠鏡の取り扱いと手入れ
取付けと取り外し:
レバーを後方へ倒す。照準望遠鏡のマウントを、レシーバ右側のレール上で前方の当たりまでスライドさせる。その前にマウントとレールの接合面を清掃しておくこと。レバーを前方へ倒し、マウントとレールを密着させる。
取り外しは逆順。その際、脱落防止のロックが掛かるレバーを押し出す。
取扱い:
照準望遠鏡は精密な光学機器であることを忘れないこと。丁寧に扱い、衝撃や汚れから保護することでのみその有用性が保たれる。
距離目盛り用ドラムは、目標までの距離に応じて着弾点の補正が必要な場合にだけ回すこと。左右調整用の保護キャップは着弾が右または左に外れるため側方への修正が必要なときにだけ外すこと。
それ以上の精密な修正や照準調整(ゼロイン)の設定は武器整備担当のみが行う。
接眼レンズ・対物レンズは必要に応じて柔らかく清潔な布で清掃すること。
銃および射撃時の作動過程
銃は弾薬が装填済みで安全装置が解除されている。引き金を引くと撃鉄が撃針を打撃する。これにより撃針が前進して弾薬の雷管を点火し、発射が起こる。
発射ガスの一部は銃身側壁のガス孔を通ってガス作動のピストンへ入り、可動部を後方へ押す。このときガスシリンダーを押しているスプリングが圧縮される。
ボルトキャリアは後退運動をボルト内に収まる閉鎖カムに伝え、ボルトを閉鎖している左右のロッキング金具が解放するまで押し戻す。その後ボルトキャリアの突起がボルトを後退させ、ロッキング金具は薬室後端/バレルエクステンションにおける閉鎖位置から角度が変わり解放位置となる。薬莢はエキストラクターによって銃身から引き抜かれる。
ガス作動部はスプリングによって再び前方に戻される一方、ボルト一式は慣性でさらに後退を続ける。薬莢はエジェクターに当たり、右方へ排出。リコイルスプリングは圧縮される。
ボルトの後退によって撃鉄は後方へ振られ、その後、撃鉄後部の下にディスコネクターが入る。これによって引き金を離すまでの間、撃鉄はコッキング位置で保持される。その後、撃鉄はディスコネクターから外れ、今度はシアーによって保持される。撃鉄バネは圧縮されて張力がかかった状態になる。
ボルトはリコイルスプリングの力で前進に転じ、その際にマガジン上段の弾薬を銃身(薬室)へ送る。ボルトが閉じる際、ボルト内の閉鎖カムはバネによって完全に前方へ押し出される。その結果、ロッキング金具が側方へ押し出されて噛み合いボルトをロッキングする。銃は再び装填状態となり次弾の射撃準備が整う。
最後弾を撃ち終えると、マガジンフォロアがボルトストップを押し上げ、ボルトを開いた位置で保持する。追加での弾薬装填が可能。
射撃に向けた準備
すべての可動部に注油する。ただし過度の注油は不可。多すぎる油は発射薬の残りカスで汚れの原因となる。
可動部が滑らかに動くか点検する:ボルトを数回開閉し、安全装置と引き金機構を作動させる。
注意:安全装置は撃鉄が起きている(発射状態)ときにしか掛けられない。撃鉄がコッキングされていない状態では安全装置は作動しない。
・フォロアがマガジン内で自由に動くかを点検。
・照準望遠鏡は最前部までスライドさせ、確実に固定されているか。
・へこみや汚れのある弾薬、弾頭がぐらつく弾薬は使用しない。
・ガス作動が不作動の場合は、反復式(手動)として運用を継続する。この場合はボルトを力強く後退させ、離すだけでよい。
・低温(マイナス20℃以下)では、ボルト部品と引き金装置を可能な限り脱脂する。
・油は石油(Petroleum)と混合(石油1:油2)。
・すべての部品を軽く注油したクリーニング用ブラシまたは柔らかい布で拭う。
・動きの渋い引き金は、緊急時に限り、石油を慎重に1~2滴たらして作動を回復させる。
・ガス作動が凍結している戦闘では、解氷するまで射撃を継続(単発、手動装填)。
・耐寒油(「frostsicher」と表示)がある場合、石油との混合が必要になるのはマイナス40℃以下になってからでよい。
・「D158」を参照。
清掃
・清掃はGew.98 系小銃と同様に行う。
・弾倉内部は無給油のままにする(汚損を防ぐ)。
・ガスシリンダーとピストンは無給油のままとする(固着・焼き付きを防ぐ)。
・部品は砂塵の侵入から保護すること。
ベルリン、1944年5月11日
陸軍最高司令部(OKH)/陸軍兵器局(HWA)
開発・試験部(代署)Kittel
K
C/0446