■レシーバー その1


第二次大戦中にドイツ陸軍が使用した主な3種類の小銃。半自動小銃をすでに実用化・配備していたソビエト・アメリカから遅れること6年、僅か1年弱という短い開発期間をもって登場したドイツ軍最初の半自動小銃、G.41。戦場での酷使に耐えられず作動不良が頻発した失敗作であったが、これは独特なガス・作動方式に因る部分が多く、これ以外の構造・デザインは扱いやすく、分解・整備も容易であった。新型小銃(G.43)の開発を急ぐワルサー社にとってG.41のレシーバーをベースにすることは自然な流れであり、開発期間の短縮につながった。






写真上がG.41、写真下がG.43。着脱式のマガジンを採用したこと、ボルトキャリアハンドルの向きが違うという部分を除き、各部の基本的な形状や寸法、機能は同じ。G.41をベースにしてG.43が開発されたことがよくわかる。




鹵獲した米兵からは「ヒトラーズ・ガーランド」ともいわれたG.43。米軍のM1ガーランドは特殊な8連クリップを使用した独特の装弾方式を採用しており、高い信頼性と命中率を誇る優れた半自動小銃であった。G.43/K.43の10倍以上となる400万丁が生産され米軍歩兵部隊の火力増強に貢献した。多くの部品が削り出しで作られたM1ガーランドは堅固でいかにも軍用銃然とした力強い印象を受ける一方、G.43/K.43は余計な肉をそぎ落として鍛えられたアスリートのようなイメージを受ける。







マガジン以外の部分でG.41との最も大きな差異は生産の効率化を求めた製造方法と表面仕上げ。これまでの独軍火器には無い、粗い表面仕上げが印象的。









■鋳造か鍛造か?

鋳造のような肌がそのまま残るG.43のレシーバー。大戦末期の品質低下を物語るような外観であるが、強度の劣る鋳造ではなく鍛造であることに留意する必要がある。金型を使って金属を圧縮し成形する鍛造は優れた強度を発揮。大型で複雑な形状のレシーバー部品を鍛造で製作することはドイツの優れた技術を示している。レシーバーが鍛造品であることは専門機関による分析で判明しているが、その一方、金属の原料はバージン材ではなく、スクラップのリサイクル原料であることも判明している。一部のG.43において生じた部品破損の主な要因は、生産方法よりも原料によるものではないかと推測する。


極初期の生産品は鍛造部品を元に機械加工で仕上げられた削り出し品、その後は表面の機械加工が最小限に押さえられている。製造工程の簡略化が主な理由だが、機械オイルが金属表面に留まり易い、金属の表面反射を減らすというプラス効果もある。 レシーバーはブルーイング仕上げであるが1944年末からはパーカーライジング仕上げも登場する。






ボルトキャリアもレシーバーと同様に鋳造ではなく鍛造によって作られる。製造時期によって複数のバリエーションが確認でき初期は機械加工された外観を持つが、その後は機械加工が最小限に抑えられ粗い外観がそのまま残っている。

G.43採用後に発生したボルトキャリア先端部が破損する問題に対処するため、ボルトキャリア上部に小さなリブを追加する改良が施される。本銃はリブが追加された後期型。

射撃時に前後に動くボルトキャリアは最終弾を撃ち終わると、ボルトが後退位置で止まるボルトストップを備える。マガジンハウジングの後部に配置されたプレートがマガジンフォロワーに押されてせり上がり、ボルトを止める簡易な構造。マガジンを抜く、または装弾されたマガジンを装填してボルトキャリアを少し後ろに引けばボルトストップは解除される。







ボルトキャリア後部の押し込み式ボタンはボルトを後部位置で固定するボルトストップ。一つ上で紹介した残弾ゼロを示すボルトストップ機構とは異なるものであることに注意。主に分解時に使用するものであるが、後期型ではボルトストップが省略されたタイプも確認できる。




レシーバー右側に装着されるスコープとの干渉を防ぐため、ボルトキャリアのハンドルは左側となる。

レシーバー内部に収まるボルトは閉鎖用の突起が別部品となり、ボルトがストレートに前後移動する信頼性の高いリーフ・ロック・タイプと呼ばれる方式を採用。G.41と同じ方式で各部の部品形状もほぼ同じ。










レシーバー右側に設けられたZF4のマウントレール。中央の切り欠き部はマウントのロック機構。 初期は中央部に切り欠きの無いフラットなタイプであったがスコープが不用意に脱落する恐れがあったため、1944年の頭から切り欠きが追加された。また一部のレシーバーはマウントレールがなく最初からスコープが装着できない仕様が存在する。これは、G.43/K.43の一部が狙撃銃ではなく通常の小銃として生産された、またはG.43/K.43の多くは狙撃銃としての命中精度が不十分であったため、狙撃銃として運用されないようにマウントレールを削ったなどいくつかの説があるものの、マウントレールなしは全生産数の4%ほどしかなく非常に少ない。










補強用リブやボルトキャリア用のレールなど複雑な凹凸が加工された後部レシーバーの上面カバー。 極初期と最後期型の一部では削り出し、それ以外はプレス製となる。




ボルトキャリアが移動するためレシーバーカバーの上部にはスリットがある。ここからの異物侵入を防ぐためダストカバーが装備され、ボルトキャリアの移動に連動して動く。










レシーバー後部に設けられたG.41と同型の安全装置。大型のレバーで操作しやすい。




レバーを左側に倒すと安全装置解除、右側に倒せばトリガーがロックされ安全装置が掛かる。



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