■レシーバー その2







マガジンハウジングも全て削り出し、エッジは面取りされている丁寧な加工。軽量化の穴が中央に加工されており、MP38とMP40を識別するポイントとなる。




初期のMP40では側面がフラットなスチールのプレス製となり、強度UPのため側面に5本の補強リブが加工された写真のタイプへと改良が進む。









マガジンが挿入しやすいように開口部が広げられ、なおかつ内側の四隅も微妙な削り込み加工が施され面取りされている凝った造り。下面にあるリベットのような丸い部品はマガジンハウジング内を上下に貫通するエジェクター。

装着したマガジンはMP40と同様、前後にやや大きくカタカタと動き、ガタツキがある。







上下レシーバーを固定する金具。フィールド・ストリッピング(通常分解)では先ずこの金具を引き出してロックを解除する。中央のシャフトは側面に「280」のバッフェンアムトが打たれている。




フィールド・ストリッピングされたMP38。マガジンを除く銃本体はわずか4パーツとシンプルな構造で部品を紛失するような小さな部品も無い。




MP38/40の大きな特徴が3段式の伸縮式チューブに収められたリコイルスプリング。この機構は1920年代中盤にハインリッヒ・フォルマーが発明したとの説がある一方、ヒューゴ・シュマイザー発明説もあるようで詳細は明確になっていない。リコイルスプリングの変形防止と分解時の紛失防止、スムーズな作動、内部の空気がバッファーの役割を果たすためフルオート射撃時の発射レートを下げることができるなど複数の利点がある。しかし構造が複雑なため、戦後になってこの機構が採用された例は少ない。

撃針は安全性や破損した際の交換を考慮しボルト先端ではなく、チューブ式リコイルスプリングの先端に装着される。MP38と初期MP40に使われた撃針は長すぎて何らかの問題が生じたため、1942年11月以降は撃針が短くなっている(ボルトからの突出長を1.4㎜から1.3㎜に変更)。




本項のMP38はボルトが交換されているためオリジナルのボルトはマニュアルのイラストを掲載する。MP38と初期のMP40には「フック型」または「スプーン型」と呼ばれるワンピース構造のボルトハンドル(図中のKammergriff)が装備されている。このイラストではボルトが後退位置にあり、ボルトハンドルを後部の切れ込みに引っかけた安全状態を示している。この状態では射撃ができず、MP38唯一の安全装置となる。

MP38はボルトを前進位置でロックする安全装置が無いため銃の暴発事故を度々引き起こし大きな問題となった。MP38で暴発が発生する状況は以下の通りであるが、これは同時代の短機関銃に共通する問題でもあった。

・ボルトが前進した閉鎖位置にあり、実弾入りマガジンを装着。
・この状態で銃のグリップ部を下にして落下させると、着地の衝撃により慣性でボルトが後退。
・後退したボルトはマガジンから弾薬を拾って薬室に放り込む。
・ボルト閉鎖と共に暴発。

この問題へ対処するため2つの対策が実施された。

対策その1
実弾入りのマガジンを装着した場合、ボルトを後退位置の安全装置に掛ける事。ボルトを前進位置にしてはならない。これを訓練時から徹底させる。




対策その2
不用意なボルトの後退による暴発とボルトを前進位置にすることでエジェクションポートからの砂、異物の侵入を防ぐロックバンドの配布。銃身に巻いた革製のバンドをボルトハンドルに掛けてボルトを前進位置で固定する。




さらなる根本的な解決を目指すためボルトハンドルに不用意なボルト後退を防ぐ改良が施され安全性が強化された。この改良型MP40は1942年4月頃より生産がスタートし、すでに部隊配備されているMP38と旧型ボルトを持つMP40についても安全確保のため、新型ボルトへの交換命令が1942年8月に出された。ボルトの交換とレシーバーへの穴開け加工という簡単な作業で済むため多くのMP38とMP40が改修され、交換用ボルトは全数がエルマ社で製造された。本項で紹介しているMP38も新型ボルトへ変更されている。

この改修を逃れてオリジナルの姿を維持したMP38は現存数が少なく価値が高い。



レシーバーへの穴開け加工を行っていない状態のMP38。




新型ボルトへの改修が実施されたMP38には赤丸部分に穴があけられる。工作精度を要求されない簡単な改修作業であることがわかる。現存するMP38が製造時のオリジナル状態を維持しているかどうかの判断はフック型ボルトハンドルとこの部分の加工有無を確認する必要がある。




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