■バレルジャケット
アッパーレシーバーと一体のバレルジャケット。上下左右の4方向に冷却用の大きな開口部が設けられている。
厚さ3mmのスチール板からのプレス加工。ドイツ軍のMP40はレシーバーに厚さ1mmのスチール板を使用しているため、これと比較した場合、圧倒的な剛性を感じる。一方、ドイツ軍の調査ではスチール素材が柔らかく、射撃で変形を引き起こす可能性が指摘されている。スチールの質が悪く、必要な強度を確保するには厚くせざるを得なかった、という理由もありそうだ。
実際に使用されているスチール素材の硬さはマガジン装着などで実感できる。MP40はマガジンとマガジンハウジングの素材が当たる感覚や音が硬い、PPSh-41は硬質感が弱く、マガジンが若干グニャリと差し込まれていく感覚、そして装着音も硬さの弱いこもったような音になる。スチール素材が柔らかいというのは事実のようだ。
プレス加工による隙間が残ったバレルジャケット下面。ドイツ軍の小火器であれば隙間を溶接し、溶接跡を綺麗に削るという手間を掛けそうな部分。
バレルジャケット左側のスリング通し。直径4mmの丸棒を穴に通し内側で折り曲げて溶接している。シンプルで頑丈。
バレルジャケットは銃口の先端からさらに35mmほど伸びている。銃口の保護に加え、発射ガスを上と左右に排出することで反動を抑制するマズルブレーキの効果があり、命中率向上に寄与した。バレルジャケット先端部が斜めにカットされている点も反動抑制にプラスの効果があるようだ。一方で、射撃音が大きい、発砲炎が目立つなどの欠点も生じる。
銃身長は269㎜、ライフリングは4条右回り。一部の製造品は7.62㎜と口径が同じモシンナガンの銃身部品が流用されたとの情報もある。
バレルジャケット右側の放熱穴から見える銃身の刻印。銃本体の製造番号と一致する「Г33393」。
使用弾薬は7.62x25mm トカレフ弾(写真左)。初速は約400m/秒、運動エネルギーは500〜600ジュール(J)あり9×19mmパラベラム弾(初速340m/秒、462ジュール)よりも運動エネルギーが大きく貫通力に優れる。フルオートでは1秒間に16〜17発が発射されるが、7.62mmなので反動は押さえやすいようだ。またドイツ軍のマウザーC96などの拳銃弾として使用されている7.63×25mmマウザー弾(写真中央)はトカレフ弾と薬莢サイズがほぼ同じなので、PPSh-41でも共用できる。
銃口先端部下面は射撃時の埃巻き上げを防止するため隙間が埋められている。
バレルジャケット前面の断面形状はかなり丸みを帯びている。
■フロントサイト
バレルジャケット上面、中央が高くなったリベット留め台座に設けられたフロントサイト。高さと左右調整が可能。初期は取り外し可能なフロントサイトフードだったが紛失が多く、溶接固定に変更された。なお写真のフロントサイトはオリジナル部品ではなく、形の近い代用品。
■リアサイト
100mと200mの2段切り替え式のリアサイト。初期型は50mから500mまでのタンジェント式、その後、シンプルな100mと200mの2段切り替え式となり、後期型では写真のように両サイドに保護板が設けられた。
リアサイトベースはリベット留め。造りがラフなので若干傾いて取り付けられている。
射撃距離に応じて数字「10(100m)」と「20(200m)」が打たれている。