■車載型MG34のマウント




1935年から生産が開始された初期のドイツ軍戦車である1号戦車A型やB型では主武装としてMG13(7.92×57㎜)が装備されていたが、2号戦車以降は副武装としてMG34が採用された。

写真は3.7cm砲を装備した初期の3号戦車に搭載されていた主砲同軸の通常型MG34。2挺が並んでおり、75発入りのサドルドラムマガジンを装着するフィードカバーが付いていることからベルト給弾ではないことが分かる。




こちらはマニュアルに掲載された写真。右側のMGにはサドルドラムマガジンが装着されている。マガジンが干渉しないよう、2挺のMG34は前後位置を少しずらした状態でマウントへ固定され、バットストックは未装着、下には薬莢受けの袋が見える。




3号戦車N型に装備された車載型のMG34。多くの独軍戦車では主砲同軸と車体前面装甲板にそれぞれ1挺ずつ、計2挺が装備されていた。主砲同軸機銃は砲手が操作を行い、主砲と同じ照準器を使う。前面装甲板の機銃はボールマウントに取り付けられ無線手が操作する。




MG34用として最初に導入されたボールマウント(Kugelblende 30)。3号戦車E型、F型、G型、H型と4号戦車D型とE型に導入され操縦区画の前面装甲板に取り付けられた。このボールマウントは通常型のMG34を使用するが、バレルジャケットの中央部に設けられた対空射撃用照準器の取り付け基部を取り外す必要がある。また車内が狭いため、写真のようにバットストックは取り外している例が多い。

射角は、上10度、下-10度、左15度、右20度。1.75倍の倍率を持つ機関銃用の光学照準器 KZF2(Kugel Zielfernrohr 2)が装備される。※写真は照準器が未装着

Kugelblende 30は後に採用される車載型MG34(Panzermantel)も使用可能。




4号戦車D型に装備されたKugelblende 30。装甲板への取り付け基部が四角形なので円形となるKugelblende 50以降とは容易に区別ができる。




こちらも4号戦車D型のKugelblende 30。追加装甲板がボルト止めされている。




3号戦車ではJ型、4号戦車ではF型から導入された新型ボールマウント(Kugelblende 50)。射角は、上20度、下-10度、左右へそれぞれ15度。照準器はKZF2。

Kugelblende 50は1941年2月2日に正式採用された車載型MG34(Panzermantel für MG34)専用。通常型MG34はフロントサイトなどの突起が干渉するため使えない。その後、より厚い装甲板に対応できるKugelblende 80が登場し、タイガーⅠなどに装備されている。※30、50、80の数字は装甲厚の目安を示す。

パンサーやキングタイガーには傾斜装甲に対応するため、改良された特別仕様のKugelblende が採用されている。




新型ボールマウントの左側面図。マウント操作時に握る下方に突き出たグリップとその前方の細長い突起が引き金。マウントは後部が重くそのままでは運用に支障をきたすため、以下の対策が取られている。

・装甲板天井とマウントがコイルスプリングで接続されており、マウント後部を適度な角度で保持する。
・頭で重量を支え、俯仰角調整を容易にするための頭部パッドを装備。




パンサー戦車に装備されたボールマウント。右目に配置された単眼の光学照準器に額パッド、後部バランスを取る頭部パッドとコイルスプリングなどが明瞭に写っている。




装甲厚100㎜の前面装甲板に取り付けられたタイガーⅠ戦車のKugelblende 80。銃身の右に見える小さな穴は照準器の視野を確保するための開口部。円形マウントの左右にある蝶ネジはマウントカバー固定用。




タイガーⅠ車内から見たボールマウント。MG34と光学照準器は取り外されている。




装甲厚150㎜、50度の傾斜を持つ車体前面装甲板に装備されたキングタイガー戦車のKugelblende。




ボールマウントに装備される光学照準器 KZF2(Kugel Zielfernrohr 2)。機関銃本体からやや離れた位置で接眼レンズに顔を付けられるよう、クランク型となっている。全長は380㎜。

図面からは、レティクル照明装置が装着できるように見える。




KZF2のシンプルなレティクル。射撃距離に合わせたレティクル位置の調整機構がなく、レティクルは射距離200mに固定されている。そのためボールマウントに装備されたMG34の有効射程は200mとなっており、遠距離射撃は考慮されていない。










ドイツ軍戦車の場合、砲塔に装備された同軸機銃は全て主砲右側、同軸機銃を操作する砲手席と光学照準器は主砲左側にそれぞれ配置される。




4号戦車G型(7.5cm Kwk40 L/43)の砲塔内部。主砲右側にバットストックを外したMG34が装備されている。




タイガーⅠ戦車の主砲左側にある主砲用の光学照準器(写真提供:田中 良彦)。同軸機銃の照準もこの照準器を使い、砲手が足元にあるペダルを踏み込むと発射される。




タイガーⅠに装備されている主砲用照準器(TZF9b・倍率2.5倍)のレティクル。画像左の「M.G.」表記が主砲の同軸に装備されているMG34のレティクルを示し射撃距離は1,200mまで。

ここに掲載したレティクル画像は、イギリスのボービントン戦車博物館が所有する「タイガーI 初期型 131号車」に装備されている実物照準器のレティクル撮影画像(写真提供:田中 良彦)を元にトレースしているため各レティクルの大きさや配置・文字位置などは実物を完全再現している。特に中央の△が並ぶレティクルのサイズが小さく、書籍やインターネット上に掲載されている従来の画像とは異なっていることに注意。




砲塔上面のキューポラに装備された車載型MG34。「Fliegerbeschussgerät 41」または「Fliegerbeschussgerät 42」と呼ばれる専用の銃架にMG34が載せられており布製弾薬袋を左側に装着、主に対空射撃を目的としている。射角は左右へ30度ずつ、仰角は80度まで。基部の取り付け位置はキューポラの縁に沿って任意の位置で固定できる。

このマウントで使うMG34は車輌の備品に含まれていないため、対空警戒が必要な地域では主砲同軸、またはボールマウントのMG34を取り外して装着する。写真のMG34はフロントサイトのアダプターが取り付けられている。

戦車に搭載された7.92×57㎜弾薬は主に鋼鉄弾芯を使った尖頭徹甲弾(S.m.k.)が使われ、主な車輌の弾薬搭載数は以下の通り。

・1号戦車A型  2,250発 (MG13×2挺)
・2号戦車C型  2,250発 (MG34×2挺)
・3号戦車J型  2,700発 (MG34×2挺)
・4号戦車H型  3,150発 (MG34×2挺)
・パンサーG型   4,800発 (MG34×2挺)
・タイガーⅠ  5,700発 (MG34×2挺)
・キングタイガー  5,850発 (MG34×2挺)


また参考までにタイガーⅠに搭載されていたMG関連の主な備品を紹介する。(※参照元 REPORT ON Pz Kw VI (Tiger) Model H, PART II, ARMAMENT, FIGHTING ARRANGEMENTS, STOWAGE AND POWER TRAVERSE, SECTION III STOWAGE : Military College of Science SCHOOL OF TANK TECHNOLOGY, January 1944)

・車載型MG34 × 2
・MG34 カバー × 1
・弾薬袋(150発入) × 32
・金属製弾薬箱(300発入) × 3
・MG34予備収納箱(2脚、バットストック、フロントサイトブラケット) × 2
・KZF2(ボールマウント用照準器) × 1
・MG34 予備銃身(2本入) × 3
・MG34 予備部品(バットストック、2脚) × 1
・MG34 スタータータブ × 32
・MG34 ベルトリンク × 96
・MG34 スリング × 2
・MG34 スパナ × 2
・MG34 マズルカバー × 4
・MG34 清掃用ブラシ × 6




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