■パンツァーシュレック

約30万挺が生産されたパンツァーシュレックは現存数が少なく市場へ出ることはほとんどない。今に残る多くのパンツァーシュレックは第二次大戦中にドイツがフィンランドへ販売した輸出品であり、その後、コレクター市場に流れたもの。





ドイツからフィンランドへ2,000挺のパンツァーシュレックと2万発のロケット弾を20万ライヒスマルクで輸出することが決まり1944年4月から44年9月までに順次フィンランドへ納品された。最終的な納品数はパンツァーシュレックが1,854挺、ロケット弾が18,650発。1944年6月から最前線で運用が開始されたものの、大きく重いパンツァーシュレックの使用は限定されたため本体は約1,600挺、ロケット弾は約14,000発が終戦時に残り、戦後もフィンランド軍で使用された。

1950年代に入るとパンツァーファウストを参考にフィンランドで開発された対戦車無反動砲55 S 55(55㎜無反動砲 1955年採用)の配備が進み、旧式化したパンツァーシュレックとロケット弾は1960年頃に海外へ放出された。

当初、ドイツ軍と同じダークイエローで塗装されたフィンランド軍向けのパンツァーシュレックは運用時に目立つため1944年8月以降はフィンランド国防軍本部の命令によって独自のダークグリーンで再塗装されており、フィンランド国防軍を示す「SA」マーク(※Suomen Armeijan)が記されている。

上の写真は本項で紹介しているパンツァーシュレックのレストア前の状態。本個体はフィンランドへ輸出された1,854挺のうちの1挺。シールド付きで各部の形状は中期生産型の特徴を有している。筒内側に鉄棒が溶接されているなどの安全対策、2か所にフィンランド軍独自の3桁数字刻印が打たれている、スリングが欠損している以外は良好なオリジナル状態を維持している。








フィンランド軍仕様のパンツァーシュレックをドイツ軍のオリジナル状態に戻すためレストアを実施。ダークグリーンの塗膜を完全に剥がす。




















塗装を剥離後、オリジナル品に準じた赤茶の下地塗装を行い、その上からRAL7028に近似したダークイエローを塗装。欠損していたスリングはオリジナル金具付きを取り付けた。

全長:1650㎜  重量:10.7kg(シールド付)




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