■発射筒






全長1650㎜、内径91㎜、厚さ約2㎜のスチール素材から成る発射筒。筒の外側に溶接された各種発射機構や照準器などを除いてしまうと発射筒本体は極めてシンプルで「ただの丸いスチール製の筒」に近く「ストーブ煙突」という当時の愛称がよくわかる。発射筒は繰り返しの使用を想定しており、およそ1000回の射撃に耐える。1650㎜という長い全長になった理由は明確ではないものの「射手に吹き付ける発射ガスをできる限り減らすため」という理由が挙げられている。




筒は平らな板を丸めて接合部を溶接しているように見える。筒側面に長く伸びる繊細な溶接跡が僅かに確認できる。




筒側面には前後に伸びる凹形状の緩やかなリブが周囲3ヶ所に加工されている。このリブは下記4点の役割を果たす。

・内部を通るロケット弾との接触面積を減らし抵抗を抑える。
・ロケット弾の直進性の向上。
・筒内部に進入したゴミや砂などの異物が逃げる空間を確保する。
・筒の補強。




砲口部分。縁の周囲4か所に設けられた小さな凹みは照準調整で使用する。この凹みにヒモを通して十字線を作り、十字の中心と専用のチャート用紙を重ねて照準調整を行う。

筒内部は未塗装であるが、砲口付近は吹き付けた塗料が内側にも付着している場合が多い。







砲口先端の下側に設けられたコの字型の突起は移動時などに砲口から砂や異物が入るのを防ぐ保護バー。射撃時には一脚として使用している例も多い。初期型には無く途中から追加された。






下に伸びるプレス部品は肩当て、その後方には肩乗せが設けられており構えた際の照準器の位置を高くし照準を容易にする他、電線の保護も兼ねる。







発射筒後部。ラッパ状に広がるガードはロケット弾の装填を容易にするガイドの役割と砂や雪などの進入を防ぐ。




本個体はガードの基部と発射筒の間に小さな段差(赤矢印)がある初期のタイプ。ロケット弾装填時、この段差とロケット弾本体が干渉し装填の妨げとなる問題が発生している。




こちらのイラストが改良型。段差部分に溶接で肉を盛り段差を解消している。これ以外にもラッパ状に広がるステーを内側へ少し曲げて干渉を防ぐタイプも存在する。







写真の部品は装填したロケット弾が発射筒後部から落ちる事を防ぐストッパー。ロケット弾と干渉するためここを押しながら装填する必要があった。後期型では装填されるロケット弾が当たるとストッパーが自動的にせりあがるよう形状が改良され後部に傾斜が付けられた。










発射筒後部の接続ボックス。打撃により小型発電機で生じた電気はスチール製の保護パイプで覆われた2本の電線のうち一本を通り接続ボックスの端子差込口へ流れる。

接続ボックスは発射筒本体の塗装が終わった後に取り付けられていたようで、色が本体とは違う事が多い。ここは当時多かったという黒で塗装した。




接続ボックスの写真左側から、

装填されたロケット弾が奥まで入り込まぬよう正しい位置で止めるストッパーピン。装填されたロケット弾は後部のストッパーとこのピンで前後が遮られているため、発射筒が大きく上下に動いても勝手に落下する危険性はない。中央のピンは電気の戻り用端子。発電機から伸びる2本の電線のうち一方はこの端子へはんだ付けされている。右の穴はロケット弾後方から伸びるケーブル端子の差込口。




発射筒後方から見ると、筒内側に2本のピン(手前が電気の戻り端子、奥がロケット弾のストッパー)が確認できる。(※筒内中央の棒は安全対策用)




発射筒後部の断面図。ロケット弾が装填され、ロケット弾に点火させるためのケーブル端子が接続された状態(発射準備完了)を示す。ロケット弾から伸びるケーブル端子は取り扱いを容易にするため持ち手となる木製ブロックを介して接続される。このブロックも図面には描かれている。










筒上部に設けられた長さ調整可能なスリング。スリングの製造メーカーは「LUX」。MG用予備銃身ケースのスリングと共通の金具が使われている。




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