■保護シールド












パンツァーシュレックのロケット弾に使われている発射薬は燃焼速度が遅く、発射筒を出てから2メートルほど飛翔する間も発射薬の燃焼が続く。この発射ガスが射手を直撃するためパンツァーシュレックの射撃時には体を保護する防護マスク・長手の手袋・ポンチョなどの着用が義務付けられていたが、運用上の欠点となり兵士からも不評であった。そのため保護用の装備無しでも射撃できるよう、パンツァーシュレックに簡易シールドを取り付ける現地改修が実施されるようになり、1944年2月にはパンツァーシュレックに保護用シールドが正式導入された。

シールドは薄いスチール板(厚さ1㎜)のプレス製で重量は1.5㎏(ガラス板含む)。強度を増すため全体がやや湾曲しており縁や中央部にリブ加工が施されているが、発射ガスから射手を保護する事が目的のため防弾効果はほぼ無い。また右側は覆わない構造のため、右手は引き続き保護する必要があった。シールドにより照準器の視界が遮断されてしまうためガラス板(※ガラスではなく雲母製との情報もあり)を挟んだ小窓を通して照準・射撃を行う。




シールド前面の3ヶ所に設けられた金具は擬装取り付け用。












四角形のガラス板が収まる小窓。ガラス交換が簡易にできる構造となっている。初期は普通のガラス板を採用していたが破損することが多く、2枚を貼り合わせた強化ガラス仕様もあったようだ。










シールドに収まっているガラス板。固定金具を回転させると収納フレームが手前に開く。ガラスは割れ防止のため周囲を黒い布テープで覆っており、マニュアルには「テープの覆いがないガラス板は割れやすいので使用するな!」とある。










割れる場合を想定し、シールド内側に設置された予備ガラス収納ラック。













予備ガラスは2枚(一枚には大きなヒビが入っている)。紙に包んだ状態でラックに入れる。








この板は雲母製という情報が多いが、ガラスなのか雲母なのか現物を見ても判断できない。包み紙はサイズが小さいのでオリジナルでは無い可能性もある。




こちらは縁に覆いが無い別の予備ガラス。縁を見ると若干緑がかった色をしておりガラスのように見える。包み紙には「Panzerschreck」の文字が、ガラスには(S)のスタンプが押されている。




シールドは製造メーカーにより刻印とスタンプに分かれる。このシールドは予備ガラス収納ラック内側に「brg 44」のスタンプがあり、1944年に H.W.Schmidt で製造されたものと分かる。発射筒本体とは異なるメーカーで生産されているためそれぞれの製造メーカー・バッフェンアムト刻印は一致しない。













シールドは簡単に着脱可能な構造だが固定時に緩みはまったく無い。U字型レバーを跳ね上げれば固定が解除される。







シールドに設けられた突起板が発射筒のリアサイト金具と篏合することでシールド本体が不用意に回転する事を防ぐ。




シールド裏側上面、3桁「186」のシリアル番号はドイツ軍オリジナル刻印ではなく、フィンランド軍によるもの。




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