■感圧式信管 S.Mi.Z.35 / S-Minenzünder 35
信管を作動させるために設けられた3本の突起が特徴的な「S.Mi.Z.35」信管。信管上部を足で踏むなどの感圧によって起爆し、Sマインなどに使用される。
全長93mm(底部の保護キャップは除く)。主要部品はアルミ製のため本体は38gと非常に軽量で、実物はおもちゃのような質感。多くのS.Mi.Z.35はアルミ表面をアルマイト処理?しているためかサテンゴールドの色合いになっている。
刻印は本体側面の1か所のみ。刻印が表す意味は不明だが「ЯR 606」と打たれている。
別のS.Mi.Z.35。「ЯR 384-40」とあるので1940年製の可能性がある。
1943年製を示す「43」、製造メーカーコード「brb」。
■S.Mi.Z.35 内部構造
簡易な模式図で内部構造と作動方式を紹介。
赤:撃針 黄:ボールベアリング 水色:感圧筒 青:安全ピン オレンジ:雷管
アルミ製の外装筒本体は3分割されておりネジで接続する。内部に撃針を収めた感圧筒は上下に動く構造となっているが、通常はスプリング(黄緑色表示)によって上位置に保持される。また安全ピンを抜かない限り、感圧筒は下がらない。
撃針は後部に配置されたスプリングに押されているが、2つの小さなボールベアリングに阻まれて前進できない。ボールベアリングは撃針に押されて外側へ飛び出す力が掛かっているが、側壁に阻まれて動けない。
安全ピンを抜く。信管はこの状態でSマインにセットされ、3本の突起を含む信管上部だけを地面から露出させて地中に埋める。あとは敵兵に踏まれるのを待つ。
感圧筒上部が2.5㎏以上の力(実測値)で押されると、内部のスプリングが圧縮され感圧筒全体が下がる。約7㎜下がるとボールベアリングが外側へ飛び出し、撃針が解放される。
解放された撃針はスプリングによって前進、雷管を叩く。S.Mi.Z.35はシンプルな構造で安全性も高く、感圧部を踏めば確実に作動する。
完全分解されたS.Mi.Z.35。22パーツで構成される。
3分割されたアルミ製の本体は直径18㎜。側面の小さな穴にはピンが打ち込まれており、分解できない構造になっている。(掲載品は分解できるようピンを除去)
雷管は内部に発火用の金具(発火金)を内蔵したボクサー型。雷管周囲に確認できる緑色の塗料は雷管の種類を表している可能性がある。
S.Mi.Z.35の底部。中央には雷管、周囲にはSマイン本体などに取り付けるためのネジが加工されている。
底部にはベークライト製のキャップが付属する。
キャップの縁には樹脂部品の製造メーカーと材質を示すマークがモールドされている。製造メーカーコード「2V」、樹脂の種類を示す「S」はおがくずフィラーで強化されたベークライト樹脂。
感圧筒の周辺パーツと安全ピン。
内部の感圧筒はコイルスプリングによって上位置で保持される。
感圧筒に直接差し込み、感圧筒が下がるのを物理的にブロックする安全ピン。
安全ピンは小さなナットを外さない限り引き抜けない。またピン中央のくびれ部にスプリング内蔵のベアリングが嵌合するため、ナットが外れた状態でも勝手にピンが脱落する可能性は低い。
3本の突起は感圧筒の上面に差し込み、金具を介してネジ止めする。この突起は感圧部の面積を広げ踏ませる確率を向上させる、踏み込まれた際に確実に押し込まれるようにする、地面から飛び出ていても擬装効果を発揮するなど複数の利点がある。
「突起に触れただけで起爆する」というような情報も散見されるが、上から押さない限り起爆しない。このため地中に埋まったSマインの信管除去作業は容易に行える。
感圧筒内部に収まる撃針とボールベアリング。
筒内部に押し込まれた撃針はボールベアリングで後退位置に保持される。