■1943年製 測距儀(レストア品 その1)




1943年にドイツで生産され戦後ノルウェー軍で使用されていた1m測距儀。各部を見る限り、生産後一度も分解されていない。所有者様からの依頼を受けレストアを承った。別のページで分解写真を掲載している測距儀とは異なる個体。

一部の調整機構をのぞき完全分解後、ノルウェー軍の塗膜を剥がしRAL7028の色に準じたダークイエローで再塗装。部品の欠損・破損が一切なく、内部の状態も良好。ゴム部の劣化もなく、状態の良さという点では最良の個体といえる。独軍オリジナル仕様と異なるのはノルウェー語で表記された各プレートのみ。










測距儀の両端には革製のカバーが付く。両端の径が太いので、例えば地面に直接置いた際には本体部分が地面に触れないといった利点がある。







対物レンズは外側のカバーが90度回転する構造となっており、使用時以外に回転させることでレンズの破損や砂塵・水滴などの付着を防ぐことが可能。




「Trocken-luft」と表記された部分は直訳で「乾燥した風」を意味し、ここを開けて測距儀内部へ温風を送りこむためのもの。激しい温度差などによって結露が生じた場合、内部の光学系を拭き取ることが不可能なため、風を送ることで結露をより早く除去できる。







左右にある調整レンズの切り替えノブ。測距儀右側にあるノブ(上の写真)の場合、右に回すとレンズが収納され、左へ回すとレンズが出てくる。測距儀の光学部を調整するときだけに使用するレンズのため、通常時は収納位置にある。




凹み線が一周している無塗装部分にはスリングの金具が取り付けられる。片側だけに塗装されている赤い線は、測距儀の収納箱に正しい向きで収めるための印。収納箱の固定部にも赤い線があり、この赤線と本体の赤線を合わせると正しい収納位置となる。




使用者から見て左下にある調整ノブ。左右光学系の高さを調整するもので、ノブを回転させると本体筒の中で光学筒の角度が変化する。







使用者から見て右下にあるノブは距離調整用。ノブの回転に合わせて丸い小窓の中にある距離表示計が連動して動き、対物レンズを回転させる。しかしこの動きによって、何が変化しているのか?その効果はまったくわからない。

この調整ノブは外側のカバーを90度回転させることでノブの操作口を塞ぎ、誤操作を防ぐ事ができる。




この測距儀が1943年製のドイツオリジナルであることを示す表記プレート。製造メーカーコード「fwq」はSeelfelder Apparatebau Gmbh を示す。「29426」の製造番号が記載されている。水色の三角は1943年末ころから使用されているグリスが使われていることを示す記号。この記号からこの測距儀が1943年の末頃に生産されたものであることが分かる。















左右の上部に設けられたレティクル照明装置の取り付け基部。カバーをスライドさせて装置を取り付ける。内部に収められた四角いガラスの真下にレティクルレンズが配置されておりレンズの上部には光が通る小さな穴が開口している。




ノルウェー軍の機材名称と思われる「1m a-instr m/43」と刻印された銘板。「6×」は測距儀の倍率。その後に続く表記は測距儀調整機器に関する注意書きのようであるが詳細不明。













測距儀中央の接眼レンズ周辺部。2つの接眼レンズを覆う大きなゴム製アイピースが付属する。

両側にある無塗装部分の溝は測距儀を安定させて使用する際に使うショルダーハーネスの取り付け金具や支柱架が接続する部分。






右上のレバーを動かすことで使用者にあわせて両眼の幅を調整可能。調整範囲は55~75㎜。




接眼レンズのピント調節機能。上の写真は左右のレンズをそれぞれ反対側へ最大に調節したところ。




測距儀の真ん中に位置するサンフィルター切り替えノブ。減光なしを含めて3段階に調整可能。




中央部の下面。アイピースの基部と中央にはグリップ棒などを取り付けるためのネジ穴がある。




■1943年製 測距儀(レストア品 その2)








分解写真のページで掲載していた1m測距儀。接眼レンズ奥のプリズムを入手し完全分解したレストア品。こちらはすべての塗膜剥離後、1943年2月に採用され短期間使用されていたとされるRAL番号無しの黄味の強いダークイエローで塗装を行った。

























こちらもレストアした測距儀「その1」と同じ1943年、fwqの製造品。そして製造番号に至っては驚きの「その1」と連番になっている。

現存するノルウェー軍仕様の1m測距儀を調べる限りでは全てが1943年製。製造番号は29200~29800前後に収まっているようなので、製造メーカーから一括で納品されており数量は最大で600個前後と推測できる。




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