■測距儀で距離を測る

実物を入手しながらも、長らく不明であった「ステレオ式測距儀を使った距離の測り方」について、方法が判明しました。その方法は「目でピント調節を行うだけ」という単純なものでした。しかし、そのコツを知らないとステレオ式測距儀で距離を測る事は困難です。


■測距の鍵は「立体視」

視力回復にもつながると言われている立体視。左右に表示された画像(ステレオグラム)を両眼で見ると、平面的な画像が立体的に見えてくる。これらの立体視を行う方法や画像はインターネット上に沢山転がっているので、詳細は各自でご確認頂きたい。

この立体視を行う際の目のピント調整をイメージしながら訓練を行うと測距ができるようになります。


正しい測距を行うには測距儀を事前に調整する必要があります。

最初に付属の調整板を使い左右光学系のズレを調整。左右の目の間隔に合わせて、接眼レンズの距離も調整します。




小高い丘の上から1メートル測距儀を使い、眼下に広がる対象物までの距離を測る。左右の接眼レンズを回しピントを合わせてから普通に測距儀を覗くと画像のように見える。

※本ページに掲載の画像は実際の測距儀を接眼レンズから撮影した画像ではなく、肉眼で見たイメージを強調した合成画像です。




中央部を拡大。今回はレティクルの数字「17」「18」あたりにある木々を対象物と設定し、ここまでの距離を測る。

とりあえず測距儀を覗くとこんなイメージ。レティクルの各数字や景色全体になんとなくピントが合っており、遠方がよく観察できる。しかし、これではただの望遠鏡。いつまでたっても測距はできない。




まずは普通に覗いた状態から立体視を見るように意図的に目のピントを前後にずらす。その際に距離を測る対象物がぼやけない範囲でピントを微調整することが重要。また対象物を視野の中央に捉えておく必要は無く、上下・左右に寄っても構わない。

ピント調整しながら見ると画像のように背景の前後がぼやけ距離感がつかみやすくなる。またレティクルの数字がぼやけたりもするが気にしない。




対象物の木々におおよそのピントを合わせつつ、さらに目のピント位置を微調整していると、レティクル数字の見え方に差異があることがわかる。ここでは「10」が最も鮮明に見え、そこから数字が離れていくほどボケて見える。これが測距ができた状態。

景色の中で最もピントがあっている部分、ここでは数字「17」「18」のあたりに並ぶ木々、これが今測っている対象物。そしてこの時に最もはっきり見える「10」の数字が対象物までの距離を示す。「10」は距離1000メートルを示すことから、対象物の木々までが約1000メートルであることがわかる。




さらに遠方の距離を測る。背景のピントはレティクルの数字「16」「17」あたりに並ぶ木々に合っている。この時、レティクルの数字は「25」が最も鮮明に見えている。ここから対象物の木々までは距離約2500メートルであることがわかる。

ステレオ式測距儀は人間の目の特性を利用しているだけに、実際の感覚をつかむには実物を用いて練習するしかない。コツさえ掴んで慣れてしまうと即座に距離測定が可能となる一方、訓練をしてもコツがつかめない場合もあるようだ。ここで掲載した画像のように背景が雑多で、さまざま物が重なっている風景では目のピント調整がシビアになり測距がより難しくなる。

独軍の1メートル測距儀には「距離」と「高さ」の調整用ノブが備わっているが、これは光学系を使用前に調整するためのもので、実際の測距中は操作せず、目のピント位置調整だけで完結するものと思われる。




イギリス軍のブレニム Mk.Iとスピットファイアがこちらに飛んでくる!!
この画像では敵機までの距離は約1000メートル。このままこちらに接近する敵機に目のピントを合わせ続けた場合、ピントの合うレティクルの数字も「9」→「8」→「7」と移動していく。

このような空を飛ぶ飛行機など対象物と背景が明確に分かれている場合、測距しやすくなる。また、優れた目のピント調整機能を使うため高速で移動する目標に対しても迅速な測距が可能となる。ダイヤル調整によってピントを合わせて測距する合致式の測距儀は、高速移動の目標や飛行機のような点目標に対しては使えず、ステレオ式が圧倒的に優位となる。




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