■銃身
銃身の全長は624ミリ、銃身長は599ミリ。銃身長はkar98kとほぼ同じである。銃身本体と薬室側(バレルエクステンション)の2つの部品で構成され銃口側に向かってわずかにテーパー加工が施されている。
銃身本体の材質は特殊鋼ではなく熱処理された炭素鋼を使い、黒染め仕上げ。バレルエクステンションは黒染めとクロームメッキ仕上げの2種類が確認できる。適切な銃身交換が実施された際の銃身命数は5,000~6,000発だが、1942年頃より銃身内へ厚さ約16μm(0.016mm)のクロームメッキ加工が実施され、銃身命数は12,000発まで向上した。
機関銃の銃身は連続射撃を行うと、高温の発射ガスと弾丸との摩擦熱により急激に加熱され膨張するため極端な命中精度低下やライフリングの摩耗が早く進行し予期せぬ方向へ弾丸が飛んでいく。前方に展開している友軍の後方から射撃する場合(超過射撃)などは危険極まりない。これを防ぐために予備銃身を携行し数百発を射撃して銃身が過熱した場合、これを交換する必要がある。
ドイツ軍では250発を短いバースト射撃(5~7発)にて短時間で射撃した場合、または150発を速射した場合、交換するように推奨している。MG34機関銃では予備品と付属品一式のなかにそれぞれ1本の予備銃身が含まれている。MG34の運用にあたっては複数の予備銃身を用意し、運搬には専用のケース(1本入りと2本入り用がある)を用いる。
射撃の都度、ショートリコイルによって銃身が後退動作を行うため、銃身はバレルジャケットに差し込まれているだけ。位置を固定するような機構は備えていない。ゆえに機関部を開けば即座に銃身が取り出せる。バレルジャケット内では赤矢印の2か所のみで銃身が保持される。
銃口側の側面には5本の溝が加工されている。発射の高圧ガスを逃すことなくリコイルブースターを効率的に作動させる関係上、銃口周りの部品と銃身先端部はタイトな精度で接している。長時間の射撃によって銃口周りの汚れが作動に悪影響を与えないよう「汚れの逃げ先」となるのがこの溝。
ライフリングは4条右回り。銃口の切断面(クラウン)は真っ直ぐではなく、わずかにすり鉢状に凹ませてある。
バレルエクステンションの左右に突き出た突起(ロッキングピース)により、バレルジャケットに差し込んだ銃身を所定の向き・位置に固定させる。
薬室入口の内側には上下2本の溝が加工されている。ボルト先端が閉鎖する際に回転し、この溝と噛み合うことでロックされる。
バレルエクステンションはネジにより銃身本体と結合されピンによって固定される。ロッキング用の溝はかなり複雑な形状となっている。
■銃身の刻印
重要なパーツである「銃身」には多数の刻印が打たれている。ここでは手持ちの4本を紹介。
〇銃身その1
バレルエクステンションには銃身内の口径(ライフリングの山から山までの長さ)「7.91」、「945」、チェコスロバキアの都市、ブルーノにあったブルーノ造兵廠を示す「WaA63」のバッフェンアムトと国家鷲章。
銃身本体には銃口側から順に、「1208-002」、「43」、チェコスロバキアの都市、バンスカー・ビストリツァにあったブルーノ造兵廠を示す「14A」のメーカーコード、製造年を示す「1940」、「607」のバッフェンアムトが3つとその横に「63」のバッフェンアムトが1つ、国家鷲章。少しはなれて「S」、製造番号と思われる「1735」、「3」の刻印が確認できる。
〇銃身その2
バレルエクステンションは「銃身その1」と全く同じ。
「銃身その2」の銃身本体。「1208-002」、「7」、「14A」、「1940」、「607」が3つ・「63」が2つの合計5つのバッフェンアムト、国家鷲章、「S」、「1642」、「5」の刻印。
〇銃身その3
バレルエクステンションが黒染め仕上げ。「7.91」、「WaA63」、国家鷲章。
「銃身その3」の本体。「P」、「6」、ブルーノにあるブルーノ造兵廠を示すコード「dot」、1940年製を示す「40」、「63」のバッフェンアムトが4つ、国家鷲章、「S」、「1602」、「4」の刻印。
〇銃身その4
こちらは銃身本体のみ。メーカーのロゴ??マーク、「dot」、「63」のバッフェンアムトが2つ、「S」、太陽のようなマーク、「1570 b」の製造番号、「1」の刻印。製造年表示は無い。