■銃身交換
空冷式を採用したMG34は発射速度が900発/分と高く銃身の過熱が早いため、150発の速射または250発程度のバースト射撃を短時間で行った場合、銃身交換を行う。MG34は素早い銃身交換を可能とするために銃本体がバレルジャケットとレシーバーの前後で2分割できる構造となっているのが特徴。
銃身交換の作業手順。まずは、バレルジャケットとレシーバーの結合をロックしているラッチを押し込む。
ラッチを押しながらレシーバーを反時計回りに捻ると結合が外れ、レシーバーが回転する。バレルジャケット側は2脚で保持されているため回転しない。
レシーバーは閉じた状態から最大で160度ほど回転し、薬室が開く。
バレルジャケットに差し込まれている銃身は脱落を防ぐロック機構のようなものが無い。そのためレシーバーを回転させて、薬室を開ければ銃身は即取り出せる。
バレルジャケットと銃身は適度なクリアランスが保たれており、引き抜きは非常にスムーズ。薬室側を下げると、銃身は自重によって滑り落ちてくる。
このように銃身の取り出しは簡単だが、射撃直後の銃身は過熱しており素手では火傷の恐れがある。
そこで銃身の引き出しにはベルト弾帯の「スタータータブ」を使う。タブ先端に設けられたフック状の爪は銃身引き出し用にデザインされている。
スタータータブの爪をバレルエクステンション内側のリブにひっかけて引き出す。
バレルジャケットから引き出された銃身を保持するには機関銃手が装備するガンナーズツールポーチに含まれる耐熱パッドを使用する。とはいえ、一刻を争う戦場においては十分な火傷対策をとっている余裕は無かったかもしれない。
※独軍オリジナル品の耐熱パッドはアスベストを含むため取り扱いには注意。
過熱した銃身を取り出し後、予備の銃身をバレルジャケットへ差し込む。銃身は差し込む向きがあるので注意する。写真の向きではNG。
バレルエクステンションの両側にある突起(ロッキングピース)を写真の向きにして差し込む(180度逆向きでも可)。銃身を奥まで押し込んだら、レシーバーを時計回りに回転させ、薬室を閉じる。
銃身交換に要する時間は10秒ほど。
MG34は銃身交換をするたびにヘッドスペース(ボルトと銃身の位置関係)を調整する必要はないが、薬莢破裂などの不良が発生する場合にはヘッドスペースを確認する。これには視覚的に部品の位置関係を確認できるゲージ付きの専用ボルト、またはNoGoゲージを使って検査を行う。
■バレルジャケットとレシーバーの分離
銃身交換でレシーバーが160度ほど回転した状態から回転軸のロック金具を押し込むと、レシーバーは180度まで回転する。
ロック金具(親指のところ)を押しながら双方を引き抜くと、バレルジャケットとレシーバーが分離する。
機関銃の前後を結合する重要な部分であるため、高い工作精度が要求されるが、ガタツキは皆無で「ガチッ」と確実にロックされる。レシーバー内部はボルトが回転しながら動くため、複雑な形状に加工されている。