■フィードカバー
射撃の反動でレシーバー内部を前後するボルトの動きとリンクして長い弾帯を引き込み連続射撃を可能とするフィードカバー。MG34で採用された機構は後継のMG42をはじめ、戦後に開発された機関銃にも大きな影響を与えている。後部のラッチ(マイナスネジがある部分)を銃口側へ押すとカバーを開けられる。
MG34はベルトリンクの引き込み力が弱く、50発ベルト1本であれば問題無いが、2本以上をつなげた状態では作動不良を引き起こす可能性が高くなる。対空射撃などでぶら下がった状態の長い弾帯を使う場面では補助給弾手を配置する、一人で射撃する場合はドラムマガジンを使う、短い弾帯で射撃するなど配慮が必要となる。
フィードカバーはリアサイト本体と干渉するところまで前方へ大きく開く。
フィードカバーは写真のように40度ほど開けた状態で前方の固定ピン(人差し指で押している部分)を右側から押し込むと後方へ抜き取ることができる。
フィードカバーは、カバー本体、ベルトリンク送り部、ボルトとかみ合うフィードアーム部の3点で構成されている。MG34のベルト給弾は銃の左側となっているが、右側給弾専用に設計されたフィードアームとフィードトレイの2部品を交換するだけで右側給弾が可能。左側給弾にしか使えないように見えるベルトリンク送り部のブロックも取り付け向きを180度変えるだけで右側対応となる。右側給弾のMG34は狭い空間で給弾の向きに制限が生じる車載や要塞内のマウントなどで使用されている。
カバー本体は初期生産品のみ削り出し、その後はプレス製に変更される。
ベルトリンク送り部はカバー本体のレールに差し込むだけ。ロック機構もなく簡単に外せる。差し込み向きを180度回転させれば右側給弾にも対応できる。
ベルトリンクと接する中央のブロックが左右に動くことで、ベルトリンクも連動して機関部へ引き込まれる。
※赤矢印は給弾方向を示す。
ベルトリンク送り部の各部を説明。
1.前後2か所に設けられた弾薬押さえ。内部に強力なスプリングが内蔵されており、フィードトレイ側にベルト弾帯を押さえつけ円滑な給弾を促す。
2. 前後2か所に設けられた突起は引き込んだ弾帯の逆行を防止する。
3. フィードアームと連動して左右に動きベルトリンクを引き込む爪。バネが内蔵された爪とベルトリンクが噛み合ってボルトが1往復する間に、弾薬1発分のベルトリンクを送る。
前後に動くボルトと左右に動くベルトリンク送り部の間に位置するフィードアーム。
2つの赤矢印部がそれぞれ嵌合する。
写真上はボルトが後退位置、下はボルトが前進位置にある状態を示す。ベルトリンク送り部に接するアームが左右に動いている。
■フィードトレイ
フィードトレイは裏側にバネが入っており、これがロアレシーバー側の溝と噛み合うことで固定される。製造中のなんらかの理由により機械で刻印された「5727」の製造番号は線が引かれ「5329」という新たな番号が手書きで書かれているが、このMG34には多くの部分でこの手書き製造番号が確認できる。
写真中央の細長い溝にフィードトレイのばねが嵌合する。
フィードトレイの右側面はフラットな形状であるが、トレイに乗せたベルトリンクが滑り落ちるのを防ぐため1942年の中盤以降に改良が行われ、空のベルトリンクを引っ掛けるための突起が設けられる。写真左側のフィードトレイが改良型。これはMG42のフィードトレイでも同様の改良が見られる。
小さな突起であるが、トレイ上のベルトリンクが滑り落ちるのを確実に防ぐ。装填作業時間の短縮や確実な装填につながる。