■MG34 マニュアル 「A.Butz, M.G.34」 その1

1942年版のMG34マニュアル「A.Butz, M.G.34」。240ページ、表紙サイズは104×145㎜。関連機材を含むMG34全般から軽車輌などでの使い方まで幅広い内容を網羅している。

「Butz」とはドイツ陸軍の中で最も機関銃に精通した人物として知られるブッツ少佐を指す。ブッツ少佐は1938年にMG34のマニュアルを作成したものの、陸軍では未採用となった。その後、毎年改定版が出されるようになると、その充実した内容からドイツ陸軍の半公式マニュアルとなり幅広く活用された。

ここではマニュアル全文の日本語訳と掲載されている全ての写真・イラストを紹介する。




第8版への序文

本小冊子が広く行き渡ったことは、部隊の実際の需要に応えられた証しだと確信している。先行版の序文で述べたのと同様に、第8版でも全面的に見直しと改訂を行った。特に訓練、射撃準備、銃の手入れの分野で得られた経験を反映してある。付録は、MG34の訓練・運用の要点に取り組む上での助けになるはずだ。使いやすさのため、従来の2冊を1冊に統合。内容自体は同一だが、章立てをより実用的な順序に並べ替えた。

本冊子の利点は、MG34の訓練に必要な事柄を体系的かつ簡潔に一冊で示す点にある。これによりMG34の理解が深まり、ひいては射手の技量と部隊の戦闘力の向上に寄与する。

技術系の上級下士官の協力に対し、写真・図版の作成で献身的な助力を得たことをここに深く感謝する。

ベルリン=グリューネヴァルト、1942年3月 著者




序章 — 本銃の特性

MG34は部隊の要望(軽量化・構造の簡素化・短期間で習得できること)に応えるよう設計されている。水冷の廃止(空冷化)によって重量削減と構造の単純化を実現。訓練も短時間で済むよう配慮されている。主要作動や部品は可能な限り共通化・簡素化され、装填・発射・排莢・薬莢の排出といった一連の動作を、機関部が機械的に確実に行うようになっている。

作動原理
手動銃(ボルトアクション小銃)では射手が腕力で行う作業(閉鎖・装填・抽筒など)は、MG34では反動と復座ばねの力で自動的に行われる。射撃に入る前の最初の1発の装填のみ手動(人力)で行い、その後は機関部が自動で反復作動する。直進回転式の閉鎖機構(回転ボルトによる確実なロッキング)を備えるショートリコイル式の自動火器である。

給弾・性能

給弾方式
ベルトリンク(Patronengurt)またはサドルマガジン(Patronentrommel 34)で弾薬を供給する。 弾帯使用時:給弾は発射サイクルと機械的に直結しており、射撃に合わせて自動でベルトを送る。 サドルマガジン使用時:ドラム内のぜんまいばねによって弾が送られ、射手の操作に依存しない。

発射速度
理論上(機械的)発射速度は毎分約800〜900発(装填・交換等に要する時間は除く)。 実用上の実用発射速度は、射撃の形態によって異なるが、軽機関銃形態(2脚)で毎分およそ100〜120発、機関銃三脚(M.G.-Lafette 34)上での持続射では約300発/分が目安。

照準・有効射程
銃付属の照準(照尺・照星)で約2000m。MG用照準器を備えたM.G.-Lafette 34を用いると直射で約3000m、間接照準(曲射)で約3500mまでの射撃が可能とされる。

運用形態
MG34は軽量で取り回しに優れ、2脚を付ければ軽機関銃(l.M.G.)として行動に随伴して使用できる。一方、Lafette 34(三脚架台)や付属装備を組み合わせれば、重機関銃(s.M.G.)として持続射・領域射撃・間接射にも対応できる。状況に応じて、同一のMG34を軽機・重機のいずれの役割にも転用可能であることが強調されている。

性能・重量・火力効果
水冷機関銃(MG08)に匹敵する性能は、空冷のMG34では ① 強靭な銃身、② 銃身交換の迅速さ、③ 予備銃身の多さ によって確保され、 場合によっては水冷銃を上回る。 ※MG34の銃身交換に要する時間は、水冷銃で給水する時間より短い。 信頼性は、いわゆるオープンボルト式(引き金を引くと閉鎖動作に入りつつ撃発する方式)によって高められている。

重量
MG34(2脚・スリング付):約12kg
MGラフェッテ34:約19kg
MG用照準装置(ケース付):約2.71kg

射撃効果
a)軽機関銃(2脚)として 高所・低所の目標に対し1500m以内で良好な効果、これを超えても十分な効果。 観測条件が良ければ、小さく識別しにくい目標(例:よく掩蔽された軽機)も1200mまで有効に制圧可能。

b)重機関銃(MGラフェッテ34)として 堅固な目標(例:機関銃座)に対し1500mまで有効。 高所・低所の目標や部隊集結目標には3500mまで十分な効果。 遮蔽物のない移動目標は2000mまでに大損害を受けうる。

対空射撃と弾道性能
c)対空目標 MG34を三脚、MGラフェッテ34(対空射撃用支柱付き)、対空三脚、肩付け射撃、あるいは2連装で用いる場合、1000m以内での成功が見込める。

弾道性能・貫徹力
MG34から発射するs.S.(重尖頭弾)およびS.m.K.(鋼芯徹甲)弾の射撃性能・貫通力は小銃での数値に相当する。




I部 MG34器材の記述

A. MG34

1. MG34の主要部とその役割(図1–6)

銃身(バレルエクステンション付き)
機関部(ボルト一式)
復座ばね
バレルジャケット+結合部・照準器・リコイルブースター(S)
レシーバー+グリップと撃発機構
バットストック+基部
フィードカバー またはフィードトレイ
スリング
MG34用カバー
空包発射装置34(訓練用)

1) 銃身の働き(図1)
銃身内で弾薬が点火され、弾丸に方向と回転が与えられる。 小銃の銃身と同様だが、肉厚がより厚い。 バレルエクステンションは、ボルトによって後方から銃身を確実にロッキングするための部材で、小銃のレシーバー前環に相当する。 バレルエクステンション後部はボルトヘッドのローラーをガイドする曲線状のカムが設けられる。 外側には銃身の差し込み向きを決める2本のガイド突起、内側にはロッキング用カムが切られており、ボルトヘッド側の対応カムがこれに噛み合って回転閉鎖する(=小銃でラグがレシーバー溝に噛むのと同じ関係)。

2) ボルト(図2・2a)
ボルトは銃身後方を閉鎖し、弾薬の薬室への送り込み・発火・抽筒・排莢、および給弾機構の作動を行う。

ボルトの構成部品
a) ボルトヘッド(Verschlußkopf) 、押し金具(Ausstoßer)、左右のローラー付きガイド(Ansätze mit Rollen)、シアー(Stützhebel)、エキストラクター(Auszieher)、エジェクター(Auswerfer)
b) 撃針(Schlagbolzen)、撃針ばね、ばね座(Federlager)
c) ボルトキャリア(Schloßgehäuse)
d) 撃針ナット(Schlagbolzenmutter)

a) ボルトヘッド(小銃の遊底に相当) ヘッド部と長い後部で構成。バレルエクステンションのカム面を用いて銃身をロッキングし、ボルトキャリア、ばね受け金具と連動して撃針ばねをコッキングする。 撃針・撃針ばね・ばね受け金具を内部に保持。 ヘッドには三角断面の延長部が2つあり、これに沿ってハウジング側の傾斜カム面が動き、撃針ばねのコッキングを生む(=小銃の遊底とボルトスリーブの傾斜面の関係に相当)。 長い後部には2つのガイド突起(Gleitsteine)があり、レシーバー内でのガイドとボルトヘッドの回転動作を補助する。





ボルト各部の働き
押し金具(Ausstoßer):弾帯またはサドルマガジンから弾を薬室へ押し込む。
左右のローラー付きガイド:バレルエクステンションのカムおよびレシーバー前部のカムと噛み合い、閉鎖/閉鎖解除時にボルトヘッドを回転させる。機能は小銃のボルトハンドルに相当。
シアー・レバー(Stützhebel):ボルトヘッドが回転している間は撃針を後退位置で保持し、閉鎖と同時にボルトキャリアがレバーを押し上げて撃針を解放する。 役割は小銃の引き金(Abzug)とシア突起(Abzugstollen)に相当。
エキストラクター(Auszieher):爪で薬莢を銃身から引き抜く。
エジェクター(Auswerfer):レシーバー側のエジェクター作動プレート(Auswerferanschlag)に当てて薬莢を銃の外へ蹴りだす(=小銃の排莢機構と同様)。

b) 撃針(Schlagbolzen)
撃針ばねの力で雷管を発火させる。 前部に太くなったカラーがあり、撃針ばねがコックされた状態ではここにシアー・レバーが掛かる。同時にこのカラーは撃針ばねの前方を支える。後部にはねじが切られており、撃針ナットをねじ込む点も小銃と同じ。

ばね受け金具(Federlager):ボルトヘッド後部に圧入され、撃針ばねの後方を支える。

c) ボルトキャリア(Schloßgehäuse)
ボルトキャリアはボルトを収め、撃針後部金具と連動して撃針ばねをコッキングし、ボルトの前進・後退運動をガイドする。 ボルトキャリア前部の傾斜面は、ボルトキャリアが前進する際にシアー・レバーの下にもぐり込む。この傾斜面の役割は小銃において引き金を引く働きに相当する。ボルトキャリアの曲線状の開口部の中をボルト側面に設けられた突起が動く。ボルトキャリア後方上部にある互いに向き合う二つの突起は、送弾レバーおよび弾帯送りレバーによって給弾機構を作動させるために使用される。ボルトキャリア下面の突起は、引き金を戻したときにボルトを後退位置で保持するための掛かり(オープンボルト状態で保持)。

d)撃針後部金具(Schlagbolzenmutter)
撃針ばねをコックするためのものである。さらに、撃針によってボルトとボルトキャリアを結合する、閉鎖が始まるまで撃針を保持しておく。

3) リコイルスプリング(Schließfeder) 反動で後退したボルトを前進させるメインのばね。小銃を装填する際にボルトを前進させる動作に相当。

4) バレルジャケット(Mantel, 図3) 銃身を収める外筒。接続金具(Verbindungsstück)によってレシーバーに結合される。前方部はねじ込み部を備え、リコイル・ブースター等を装着する。2脚の装着部やフロントサイト、対空射撃用照準環の取り付け基部などが設けられている。要するに、銃身の保持・冷却・各種付属品の取り付けという役割を担う外装筒。




接続部(Verbindungsstück)と照準器・取付部
接続部はバレルジャケット後端とレシーバーを結合し、同時に銃身後部の支えとガイドを兼ねる。内部では銃身のバレルエクステンションと銃身位置戻し装置が機械的に連結され、ショートリコイルで後退した銃身をただちに前方へ押し戻す。照準は地上目標ではフロントサイトを、対空射撃ではリアサイトの対空照準と対空射撃用照準環を用いる。 2脚の差し込み・固定部は、素早い展開と確実な保持ができる。

5) レシーバー(Gehäuse, 図4)
内部にボルトとリコイルスプリングを収め、ボルト前後移動時のガイドとなる。レシーバーの役割は小銃の機関部と同一である。レシーバーではこれにリコイルスプリングの収容が加わる。上部は給弾機構のフィードカバーまたはサドルマガジン用カバーで閉じられる。後部にはばね付きのラッチが取り付けられており、リコイルバッファーがレシーバーから外れるのを防止する。

下面にはグリップ部が引き金機構、安全装置とともに設けられている。 グリップ部の後方にはMGをMGラフェッテ、2連装銃架、および車載用として装着するための突起がある。グリップ部の前方には薬莢袋用の取付部とエジェクションポートがある。エジェクションポートはダストカバーで閉じられており、引き金を引くと自動的に開く。

レシーバー内部前方の左下には戻しロッドとばねが収まっている。これは反動で後退した銃身を、ボルトヘッドによる閉鎖解除の直後に元の位置へ押し戻す。 右側には板ばね付きのコッキングハンドルがあり、ボルトキャッチを持ち上げる、装填の際にボルトを後退させる、およびリコイルスプリングを圧縮することに使用される。右の内側にはエジェクター作動プレートがある。ボルトが後退する際、エジェクターがこれに当たり、薬莢を外へ蹴りだす。

グリップは引き金機構を収める。肩付けの姿勢で射撃する際のMGの操作に使用される。シアーの突起はレシーバーの開口部を通ってボルト移動部へ入り込む。引き金が引かれていないとき、このシアーはボルトキャリア下面に当たり、前進中のボルトを受け止める。

6)ストック取り付け基部・リコイルバッファー(Bodenstück)はレシーバーを後方から閉じ、リコイルスプリングの後部受けとして、またストックの取り付け座として使用される。後端部には緩衝ばねがあり、ボルトが後方に強く衝突するのを防ぐ。

7)バットストック(Kolben)はレシーバー後部に着脱式で取り付けられ、MGを肩に引き付けるために使用される。

8)フィードカバー(Deckel)(上部給弾機構=Zuführeroberteil)(図5)はベルトリンクを用いる場合に、フィードトレイ(Zuführerunterteil)と組み合わせて弾薬を送るために使用される。フィードトレイには50連ドラムマガジン(Gurttrommel 34)を掛けられるようになっている。フィードカバーにはカバーを閉じるラッチ(Deckelriegel)がある。フィードカバーの前部には上部給弾機構を差し込み式で装着する。フィードカバー内側には可動する給弾レバー(Transporthebel)とベルトリンク送りレバー(Gurtschieberhebel)がピンで取り付けされている。フィードカバーの前端はカギ型の突起になっており、これをレシーバーに掛けてフィードカバーを装着する。

上部給弾機構の構成:
給弾ハウジング(ばね付きベルトレバー2個、およびばね付き押しレバー2個)、 ベルトリンク送り(Gurtschieber)(バネが付いた送り金具(Zubringhebel))。

給弾レバーはフィードカバーを閉じた状態でその突起がボルトキャリア上面の突起と嵌合。ボルトの前後運動を給弾レバーを介してベルトリンク送りレバーの左右運動に変換する。これにより、ベルトリンクの次弾が送り金具によってボルトの移動路に導かれ、ボルトから銃身(薬室)へ押し込むことができる。ベルトレバー(ばね付き)はベルトリンクが給弾部から後戻りするのを防ぎ、押しレバーは弾薬をフィードトレイ側へ押し付ける。

サドルマガジン用フィードカバーはサドルマガジンを使って射撃する際に、これを装着するために使用される。サドルマガジンを装着する開口部が上面に設けられており、未装着時には2枚の板で閉じられ、汚れの侵入を防ぐ。サドルマガジン用フィードカバーはサドルマガジンを確実に保持し、MGからの不用意な脱落を防止する。サドルマガジン用フィードカバーを用いる場合、フィードトレイは不要となる。


9)スリング(Trageriemen)は行軍時にMGを背負うため、戦闘で前進するときの持ち手として、また移動中射撃時の把手として用いる。

10)MG34用カバー(Bezug)はMGのレシーバー部を包み、ボルト関連部品を塵埃や異物の侵入から保護する。行軍などで射手が携行するすべてのMG34に使用される。


11)空包発射装置34(Platzpatronengerät 34)(図6)は銃身+スリーブ、差し込み部(Einsatzstück)+バレルエクステンションから成る。これは空包射撃に使用される。 銃身と差し込み部は、MG34の銃身またはMG08、MG08/15の銃身から製作されている。バレルエクステンションはS型銃身(S弾(Spitzgeschoss=尖頭弾)用に規格化された銃身)のものに相当する。差し込み部は空包発射装置の後部を構成し、スリーブ内に可動支持される。スリーブは中空円筒で、銃身と差し込み部の連結に使用される。 実包で射撃する前には必ず、空包発射装置を実包用の銃身に交換してあることを操作員は確認しなければならない。

図6 空包発射装置34
a) 空包発射装置34(完成状態)  バレルエクステンション/スリーブ/銃身/汚れ溝
b) 空包発射装置34(分解状態)  スリーブ/銃身/汚れ溝/挿入部/バレルエクステンション




II. 銃の作動

1. 装填時・射撃時・排莢時における作動 (小銃の作動と対照して示す。)
注記: 作動の出発点はボルトが前進位置、銃身とボルトは閉鎖、ボルトは非コッキングの状態。

a) 単発射撃用として 小銃(Gewehr) / M.G.34

(1) 小銃: ボルトハンドルを持ち上げる(ボルトが左へ回転)ことにより、ボルト前端のロッキングラグがレシーバー前環の溝から回転して外れ、銃身とボルトとの閉鎖が解除される。 同時に、ボルトおよび撃針ナットの傾斜面によって撃針ナットが後方へ押され、それに伴い撃針が引かれて撃針ばねがコッキングされる。

M.G.34: コッキングハンドルを後方へ引くことにより、ボルトヘッドが小銃と同様に回転し、これによって銃身とボルトの閉鎖が解除される。同時に、ボルトヘッドの傾斜面とボルトキャリアの傾斜面によって撃針ナットがボルトキャリアにより後方へ押される。

(2) 小銃: ボルトハンドルの操作により銃身からボルトが離れて、後退位置へ引くことができる。ボルトの後退は左ロッキングラグがボルトストップに当たることで止まる。

M.G.34: コッキングハンドルの操作により、銃身からボルトが離れ、最も後ろの位置へ引くことができる。同時にリコイルスプリングが圧縮される。ボルトの後退運動は、リコイルスプリングとストック取り付け基部+バッファーによって止まる。

(3) 小銃: クリップでまとめた弾薬5発を弾倉機構に押し込む。

M.G.34: ベルトリンクをフィードトレイに引き入れる(挿入する)。 両方の武器において、この時点で最初の弾薬はボルトが前後に動く走路上にある(小銃では下から、M.G.34では上から)。

(4) 小銃: ボルトを前進させると、一番上の弾薬が強制的に前方へ、薬室に押し込まれる。

M.G.34: 引き金を引くとシア突起が下方へ引かれ、これによってボルトは解放され、リコイルスプリングの力で前進する。ボルト走路上の弾薬は、ボルト前面上部にある押し金具によって強制的に薬室へ押し込まれる。

(5) 小銃:射手は自分の力でボルトを前進させなければならない。ボルトハンドルを右へ倒すことにより、ボルト前端のロッキングラグがレシーバー前環の溝へねじ込まれ、銃身とボルトが閉鎖する。

M.G.34:ボルトの前進はリコイルスプリングによって行われる。 前進運動が終わる直前、ローラー付きガイドによってバレルエクステンションの曲線カムによりボルトヘッドが回転させられる。この際、ボルトヘッド側の閉鎖用突起が銃身側バレルエクステンションに噛み合い、銃身とロッキング(閉鎖)する。

(a) エキストラクターの爪は、弾薬のリムに噛み合っている。
(b) 送り金具(ばね付き)は、次弾を下からボルトへ押しつける。  (弾薬がベルトリンクから押し外されると、送り金具は給弾レバーとベルトリンク送りレバーによって、新しい弾薬をボルトの上へ運ぶ。)
(c) 両方の武器において、この時点で一発は薬室内にある。銃身はボルトにより閉鎖されており、状態は同一である。

(6) 小銃:射手は指で引き金に触れる。

M.G.34:ボルトキャリアの傾斜面(ランプ)がシアー・レバーの後ろへ入り、これを下方へ押す。

(7) 小銃:射撃のために射手が引き金を引くと、シア突起が下方に引かれ、撃針が解放される。

M.G.34:ボルトキャリアはその傾斜面でシアー・レバーの上をすべり、これを下へ押し下げる。シアー・レバーの突起が撃針を解放する(小銃のシア突起と同様)。 ここでどちらも撃針は解放され、撃針ばねの力で前進して弾薬の雷管を打撃する。

(8) 小銃:銃身の閉鎖解除と撃針ばねの再コッキングは、上記(1)と同じ要領で行われる。

M.G.34:銃身の閉鎖解除と撃針ばねの再コッキングは(1)と同じだが、閉鎖解除は射手の操作(コッキングハンドルを引く)ではなく、反動によって行われる。コッキングハンドルは前方位置のまま。

(9) 小銃:(2) に従ってボルトを後退させると...(続く)

M.G.34:反動によって後退する際、(5a) でエキストラクターにつかまれた薬莢は銃身から引き抜かれ、ボルトが最後端に達した時にエジェクターによって下方へ排出される。両方の武器において、次弾は再びボルトの走路上にある。小銃では下から、M.G.34では上からである。これらの作動は、両方の武器において弾薬が続くかぎり繰り返される。

(10) この対比では、M.G.34については単発射撃用武器としての作動のみを考慮した。M.G.34の作動は小銃と基本的に同一である。相違点は、装填・射撃・排莢(排出)において作動を担う動力である。


b) 機関銃として

(11) 小銃では、射手が装填・射撃・排莢に必要なすべての作業を自ら行う。 M.G.34では反動がばね力と結びついて、これらの作業を行う。

(12) 小銃では銃身は固定されている。反動は作動に使用されず、射手の肩で受け止めねばならない。 M.G.34では銃身は可動である。このため反動は、銃身の閉鎖解除、ボルトの後退(ブローバック)、撃針ばねのコッキング、ならびに薬莢の引き抜きと排出に利用できる。

(13) さらに反動は、リコイルスプリングを使うことで補助力を自ら作り出す。リコイルスプリングがボルトを前進させ、押し金具で弾薬を薬室へ押し込み、銃身を閉鎖する。閉鎖の直後、リコイルスプリングはボルトキャリアをさらに前方へ押す。これが傾斜面によってシアー・レバーを下方へ押し、撃針を解放する。

(14) ボルト前進の最後の3分の1において、給弾レバーはボルトキャリアの突起によって左側へ押される。その際、ベルトリンク送りと送り金具を右側へ押し、次弾がボルト走路の上に動く。

(15) 射撃の安全を確保するため、銃身は
a) 弾丸が銃身を離れるまで、ボルトによって閉鎖されたままでなければならず、
b) 新たな弾薬を伴ってボルトが後方から戻ってくる前に、元の位置(前方)へ戻っていなければならない。

これを保証するのが、
— a) ボルトキャッチ、
— b) 銃身位置戻しロッドとそのばね、である。

a) 接続部(バレルジャケットとレシーバーの)右側に取り付けられたボルトキャッチは閉鎖時のボルトヘッドの跳ね返りを防ぎ、銃身の早期解放を遅らせる。そのため閉鎖直後、ボルトキャッチはボルトヘッドのローラー付きガイドにかぶさる。銃身がボルトとともに後退すると、ボルトヘッドのローラーは、静止しているボルトキャッチの突起の下方を抜け、ボルトヘッドは回転可能となる。

b) 銃身位置戻しロッド+ばねはレシーバー前方左側に内蔵。銃身が後退すると、 銃身位置戻しロッドが押され、内部のばねも圧縮される。閉鎖解除後、ばねは銃身位置戻しロッドを押し、銃身を前方の元の位置へ戻す。これは、ボルトが後方から戻ってくる前に完了していなければならない。同時に銃身位置戻しロッド+ばねは銃身がレシーバーに当たる衝撃を緩和する。

2. ボルトをコッキングするとき
ボルトヘッドとボルトキャリアの傾斜面により、ボルトヘッドが回転するときボルトキャリアは後方へ押し戻される。ボルトキャリアはこの際、撃針ナットによって撃針を後退させる。

撃針ばねはボルトヘッド内のばね受け金具に当たる。ばね受け金具はこの後退運動には追随しないので、撃針ばねはばね受け金具と撃針のカラーとの間で圧縮(=コッキング)される。 撃針はいまボルトキャリアにより撃針ナットを介して保持されているが、シアー・レバーはすでに撃針カラーの手前に来ている。撃針カラーとシアー・レバーとの間には、わずかな間隙が残っている。この状態でボルトの前進が行われる。 ボルトヘッドの回転(=閉鎖)が始まる直後、撃針の保持は撃針ナットからシアー・レバーへ引き継がれる。この配置により、撃針が自由になるのは、ボルトヘッドによる銃身の閉鎖がすでに始まってからに限定される。 シアー・レバーが故障・不作動になった場合でも、ボルト先端から撃針が突き出た状態でベルトリンクから弾薬を押し出して、銃身(薬室)へ送り込むことは不可能である。(※撃針が出たまま装填されて暴発することはない)

3. 安全操作(セーフ/解除)
銃をセーフにするには、安全装置を「F」が覆われるまで後方へ回し、「S」だけが見える位置にする。このときレシーバー側の突起が引き金レバーに干渉してロックする。解除する際は、安全装置を前方へ回して「F」が見え、「S」が覆われる位置にする。

要点:ボルト前進位置なら安全装置も前。 安全装置はボルトが後退位置にあるときにのみ後方へ回してよい。ボルトが前進位置にある状態で安全装置を回してセーフにしようとしても動かせず、無理は操作は不具合の原因となる。



III. MG34の分解と組み立て(図7–11)

MGは必ず弾薬を抜き(ボルトは前進位置)、非コッキングの状態で行うこと。

1) フィードカバーを開いて外す 射手は片手でバットストックを握り、もう一方の手でフィードカバーラッチを親指と人差し指でつまみ、前方へ押す。フィードカバーを持ち上げて立て、ついで上に引き抜いて外す。サドルマガジン用フィードカバーの場合も同様の手順で外す。 (フィードカバーからベルトリンク送りと送り金具は右側へ引き抜いて取り外し可能。組立時は逆順に行い、送り金具の前側がベルトリンク送りの溝に正しく噛み合うよう注意する。)

2) バットストック+バットストック基部/リコイルバッファーを外す 片手でレシーバーを握り、人差し指で前側の後端部ラッチをレシーバーに向け押し込む。 もう一方の手でバットストックを左へ1/4回転させ、リコイルスプリングの圧力をゆっくり受け止めながらバットストックを引き抜く。リコイルスプリングを取り外す。

3) ボルトを抜き出す(図7) 左手でレシーバーの後部を包み込むように保持、右手でコッキングハンドルを引いてボルトを後退させる。左手でボルトを受け取り出す。

4) 銃身を抜き取る(図8) 右手でグリップ部を握り、左手でバレルジャケット後方の下部をつかみ、親指で前側のレシーバー/ジャケット結合ラッチをできるだけ強く押す。右手でレシーバーを左下方向へ回転(銃口はやや上に)、銃身が自由に後退できる位置にする。左手で銃身をつかみ、ジャケットから引き抜く。

5) ボルトを分解する
a) 撃針ナットを外す(図9) 左手でコッキングされたボルトをボルトヘッド側から軽く保持し、右手の親指と人差し指で撃針のカラーをつかんで撃針ナットを左回しでねじを緩める。そのままボルトキャリアを前方へ押し出すと、撃針ナットを取り外せる。 右手の親指と人さし指で撃針ナットのローレット部を後方へ引き、同時に撃針ナットを左に回しねじを緩める。ついでボルトキャリアを前方へ押し出してシアー・レバーを解除し、ボルトキャリアをボルトヘッドから外す。 新型の撃針ナットでは、撃針ナットを外すために、ストッパー金具を側方へ押して水平位置にすること。










b)ばね受け金具を取り外す。(図10) ボルトキャリア前部を下にして台の上に置き左手で保持。右手でボルトヘッド(撃針のねじ部付き)をボルトキャリアへ挿入し、ばね受け金具後端部の平削面がボルトキャリア側の対応する開口に嵌合させる。手のひらでボルトヘッドを強く下へ押しつけ、右へ回してばね受け金具の突起が溝から抜けるまで行う。その後、撃針ばねの圧力に注意しつつボルトヘッドを上方へ持ち上げ、撃針と撃針ばねを取り出す。機関銃手によるこれ以上のボルトの分解は禁止である。

c)ボルトを組み立てる。(図11) ボルトキャリア前部を下にして台の上に置き左手で保持。右手でばね受け金具(平削面を下向き)をボルトキャリアの開口部に置き、撃針ばねを付けた撃針をシアー・レバーを持ち上げながらボルトヘッドに挿入し、撃針の下部(ねじ部)をばね受け金具の貫通孔に通す。右手の手のひらでボルトヘッドをぐっと下へ押しつけ、左へ回して、ばね受け金具の突起がボルトヘッドの溝に確実にはまるまで行う。ついで押し金具が上を向くようにボルトヘッドをボルトキャリアに収め、撃針ナットを撃針のねじ部にねじ込み、カチッと音がするまで締める。

新型の撃針ナットでは、ストッパー金具を水平位置にしてねじ込みを行う。撃針後端に当たったら、押し上げて(水平位置に)保持すること。ストッパー金具の前端は撃針の平削部の横に位置していなければならない。


7)ボルトをコッキングする。 左手でボルトヘッドをつかむ。 右手でボルトキャリアを右へ回し、ボルトヘッド上のローラー付きガイドがボルトキャリアのガイドレールと同一線上に来るまで回す。

8)リコイル・ブースターを外す。 右手でバレルジャケット前部を、親指で照星(フロントサイト)前のラッチに届くよう握り、そのラッチを持ち上げる。 左手で消炎器を回して外し、内部のリコイル・ブースター・コーンを取り出す。必要に応じスパナを使用してよい。同様の要領でブースター・スリーブ(Rückstoßhülse)を回して外す。

9)MGの再組立は、逆順で行う。 ボルトを挿入する際は、レシーバーをやや持ち上げるのがよい。ボルト側のエジェクターは最前位置となるよう押し込む。

組立時はすべてのラッチ類がそれぞれの切り欠きに正しく嵌合するよう注意する。





B. 射撃用架台

I. l.M.G.(軽機)としての使用

1)2脚(図12)
2脚は射撃時に前部支持(バレルジャケット前部)または中間支持(バレルジャケット後部)として使用される。脚は地形に応じて調整でき、行軍時にはバレルジャケットへ折り畳んで取り付けておくことができる。

2)三脚34(Dreibein 34)(図13)
三脚34は地上目標および対空目標の交戦に用いる。2脚だけでは十分でない姿勢での射撃や対空射撃にも適する。中間支持としても使用できる。脚は伸縮式で角度調整可、外側へ大きく振り出すことも可能であり、伏せ撃ちから立射に至るまで用いることができる。わずかな方向修正は脚の調整または置き換えによって行うことができる。スリングは射手が三脚を携行(肩掛け)する際に使用される。





II. s.M.G.(重機関銃)としての使用

M.G.-ラフェッテ34+対空射撃用支柱(Lafettenaufsatzstück 34)(図14・15)
s.M.G.としての射撃架台はM.G.-ラフェッテ34である。これにより長時間の持続射撃、前方へ展開する友軍や遮蔽物を安全に越える射撃、ならびに遮蔽物の隙間を通した射撃が可能になる。

ラフェッテの構成部
上部架台(Oberlafette/Wiege)と銃受け(Gewehrträger)
照準装置(Richtvorrichtung)※射撃深度自動調整装置付き
下部架台(Unterlafette)および対空射撃用支柱

上部架台+銃受けは射撃中にMGを保持するためのもの。上部架台にはMGの照準装置が装着される。後部の銃受けはMGのグリップ後方にある突起が掛かり、前部は銃身交換に対応した回転式軸受(Klapplager)で固定金具とともにMGのバレルジャケットを保持する。銃身交換レバーは回転式軸受にあり銃身交換の際に用いる。銃受けには薬莢偏向板が取り付けられている。

照準装置はMGで直接照準・間接照準を行うための装置である。 横方向(側方)の調整は後部のスライドレールで行い、高さ(俯仰)方向はハンドル/ギア式で行う。 横方向はクランプ(締付ねじ)で固定できる。照準機の前部には自動式の射撃深度調整装置と切替レバーがある。 自軍の部隊や掩蔽物を、直射・間接射のいずれの方向であれ越えて射撃する必要がある場合に用いる。 自動式の「射撃深度(Tiefenfeuer)調整装置」は、深度射撃を行うためのものである。これは射撃中、銃架内でMGが後座運動する際に作動し、銃架の突起が当該装置のローラー付きガイドに当たることで作動する。銃架側の突起と深度射装置のガイドとの間隔は7mmを超えてはならない。目盛の入った調整リングを調整することで、深度射撃の幅は任意に拡大・縮小できる。

ラフェッテの下部は可動式の後脚に加え、伸縮・旋回可能な前脚および中央支柱を備え、伏射・座射・膝射といった各種射撃姿勢の高さに合わせて据え付けるためのものである。後脚はウィングナットで、前脚と中央支柱はバネ付きの止めレバーで、それぞれ所定位置に固定される。

ラフェッテのフレーム後部には、機関銃を左右に振るためのスライドレールがあり、横方向リミッターを設定するための目盛(1目盛=10ミル)が付されている。フレーム前部には、ラフェッテを車両に固定するための二つの軸ピンと、対空射撃用支柱(Lafettenaufsatzstück)を装着するための基部がある。さらに左右それぞれに、折りたたんだ後脚を載せるための支柱が設けられている。 左側のフレームパイプには予備ボルトケース(Schloßbehälter)が取り付けられており、スペアパーツを収めた箱(Erg.-Kast.)から取り出した予備のボルト一式をラフェッテに携行できる。左右のスリングはラフェッテを背負って運搬するためのものである。





III. 対空用装備

1) 連装対空射撃用銃架36(Zwillingssockel 36)(図16・17)

連装対空射撃用銃架36は2挺のM.G.34を用いる対空射撃用の射撃架台である。適切に設置すれば馬で牽引するM.G.用車両や乗用車にも搭載して用いることができ、トラックや屋根のない鉄道貨車での使用も可能である。

連装対空射撃用銃架36の利点は、停車中の車両からの固定位置射撃だけでなく、馬牽引車両・自動車・鉄道車両が走行中でも、飛行機に対して射撃(照準の付与)ができる点にある。 連装対空射撃用銃架36は【専用の】基部の上に据え付けられ、ボルトによって床板に固定される。2挺のM.G.34および銃架の操作は一人で行う。

連装対空射撃用銃架36の構成部
上部台座(Obersockel)
M.G.保持部(M.G.-Lagerung)※クランプ(Halterhalter)および引き金装置(Abzug)付き
下部台座(Untersockel)
対空照準装置(Fliegerzielrichtung)※俯仰調整装置付き

上部台座は下部台座内で全周回転できる。上部台座にはM.G.保持部、クランプ(ホルダー)、引き金装置、座席が取り付けられる。 高さ(俯仰)は以下の装置によって設定できる。

俯仰調整装置は次の3つを可能にする:
a) M.G.固定(行軍/走行姿勢)
b) M.G.可動 −10°~+90° の範囲
c) M.G.可動 20°~90°の範囲

下部台座は連装対空射撃用銃架をM.G.用車両または乗用車上に据え付け・固定するためのものである。座席は高さ調整可能で、ばね付き背もたれを有する。これにより射手は発射時に安定した着座姿勢を保ち、照準・射撃の継続が容易になる。 対空照準装置は上部台座に取り付けられ、スライド機構により前後移動でき、さらに軸を中心に旋回できる。装置は俯仰変化に連動し、リングサイト(Kreiskorn)と対空照星(Fliegerkorn)からなる。




2) 対空回転支柱台(Fliegerdrehstütze)(図18)
対空回転支柱台はM.G.34の射撃架台として、乗用車およびトラックからの対空射撃に使用される。低空で飛行する航空機や、走行中のM.G.-車両での射撃に適する。 三脚34(Dreibein 34)およびM.G.-ラフェッテ34+対空射撃用支柱34(Lafettenaufsatzstück 34)もM.G.34の対空射撃用の射撃架台として使用できる。






C.  M.G.-照準装置(図19–21)

M.G.-照準装置は直接照準のときにも、望遠鏡使用時にも、目標の捕捉を容易にし、敵情の観測および遮蔽物の確認、さらに方位(側方向)と仰角の設定を伝達するのに役立つ。 直接照準では3000 mまで、間接照準では3500 mまでの距離に対し対応する。

M.G.-照準装置は、M.G.08 の中央照尺(Mittelvisier)のように機関銃本体に直付けされるのではなく、M.G.-ラフェッテに取り付けられる独立の光学式照準装置である。これにより、直視照準・望遠鏡照準のいずれにおいても状況を明確に確認でき、敵の行動や掩蔽の効果を観察することができる。

望遠鏡は全周回転でき倍率は3倍、約1000mの距離で240mの視界を与える。 直接照準のための照準値設定: 距離ドラムの目盛は400–1000mは50m刻み、1000–3000mは100m刻みとなっている。所定の距離に合わせるには駆動円板を回して読み取りマークに距離数を一致させる。

M.G.を光学照準で目標に合わせる要領は、機械照準(照星=フロントサイト/照門=リアサイト)の場合と同様である。 間接照準のための側方・仰角の扱い: 側方の設定には1目盛り100ミルの側方目盛(100/6400 の表記、粗目盛り)と1目盛り1ミルの側方目盛が用意され、1ミル(1/6400、細目盛り)単位まで正確に設定できるようになっている。仰角の設定も2つの目盛りを備える。 側方(方位)の1目盛り100ミルの目盛は切離しレバーを押して内部ギアの接続を解き、上部の光学部を回して側方ドラム上の基準マークに希望値を合わせることで設定する。細目盛は側方ドラムの目盛(1/6400)を用い、駆動円板の回転で読み取りマークに一致させて調整する。 仰角は100/6400の仰角リングと、仰角ドラムの細目盛(1/6400)によって設定する。

設定の前に水平器(レベル)を使って「水平」に合わせておかねばならない。仰角リングでおおよその値を基準マークに合わせ、ついで仰角ドラムで細かな仰角を読み取りマークに合わせる。 M.G.-照準装置で目標点を照準する際、多くの場合は望遠鏡の倍率が十分であるため、これを用いるのが原則である。

上方から覗き込む簡易照準(Richtglas)は望遠鏡の使用が不可能な場合にかぎり使用される。

付属品:
観測および携行のために、M.G.-照準装置用の収納・運搬ケース(吊り下げ用ベルト付き)が付属する。望遠鏡にはレンズフィルターを装着でき、これは対物レンズに取り付ける。清掃には清掃具(布・ブラシ)および洗浄剤が用意され、ケースに収めて携行される。





D.  M.G.-ワーゲン36(Nr.5)(図22・23)

M.G.-ワーゲン36(Nr.5)は、前車(Vorderwagen)と後車(Hinterwagen)から成る。馬の牽引に適合させてあり、ばね付きのゴムタイヤを装着。用途は次のとおり。

a) M.G.34 ×2とその付属品、弾薬の運搬。
b) 連装対空射撃用銃架36(Zwillingssockel 36)を搭載しての行進中の対空射撃。

本架台は停止中の車両からだけでなく、走行中の馬牽引車・自動車・無蓋鉄道貨車からでも対空射撃が可能である。 前車は上部が開いた四角い箱形で、内部の底板には連装銃架36を固定するためのボルト穴が設けられている。箱の側板にはラック・レールがあり、そこに射手の装備や荷物を載せることができる。連装銃架36は、M.G.-ワーゲン36(Nr.5)の底板にボルトで堅固に固定される。

後車の連結部には2本のレバーがある。右側のレバー(Sの表示)を操作すると外側支持具を下方へ展開でき、これは走行中でも停車中でも座席を支えるのに使用される。これにより対空目標への射撃時に射手へ確実な足場が与えられる。側板の上部には、MG34をそれぞれ1挺ずつ収めるための蓋付きケースがある。MGラフェッテ34、または三脚は後部板の外側に設けられた取付具に装着される。これらは側板にリベット留めされたカバーにより、砂塵の付着を防止する。側板の内側はMG装備品および弾薬を収めるための仕切り(収納)を備えている。




第II部 M.G.34の取扱いと運用

I.M.G.要員の編成・装備・任務

l.M.G.(軽機関銃)について
純粋に歩兵任務を負うすべての部隊では、l.M.G.は通例、分隊(Gruppe)の枠内で使用される。 l.M.G.を対空・自衛用に保有する部隊では、当該部隊指揮官の指示に従って運用する。 分隊は通常、分隊長と射手9名で編成される。 分隊をl.M.G.班と射手班に分けたり、別個の下士官を班長として用いることはしない。

分隊内の装備と任務(表)

分隊長(Gruppenführer)
装備:機関短銃(M.P.)・マガジン6本(マガジン入れに収納)、マガジンローダー、双眼鏡、信号笛、(行軍用コンパス)、(サングラス)、(懐中電灯)。
任務:分隊長は分隊の指揮官にして先頭で戦う者である。責任は次のとおり。 自身の戦闘任務の遂行。 l.M.G.の射撃指揮、および戦闘の状況が許す限り小銃射手の射撃指揮。 分隊の武器・弾薬・装備を使用可能な状態に維持管理。

射手1(Schütze 1)
装備:M.G.34(50連ドラムマガジン装備)、50連ドラムマガジン1個を腰ベルトに装着、拳銃、ガンナーズツールポーチ、懐中電灯、(短スコップ)、(サングラス)。
任務:射手1は機関銃手である。責任は次のとおり。 戦闘におけるl.M.G.の操作。 射撃に先立つM.G.の点検。 M.G.の整備。

射手2(Schütze 2)
装備:銃身ケース(Laufschützer)入り予備銃身1本、50連ドラムマガジン4個(うち1個は対装甲用の徹甲弾装填)、弾薬箱(Patr.-Kasten)1個、弾薬箱運搬ベルト(Tragegurt 34)、拳銃、短スコップ、サングラス。
装備が携行袋式の場合:
a) 50連ドラムマガジン用携行袋1
b) 弾薬箱の代わりにさらに50連ドラムマガジン4個
c) 弾薬箱運搬ベルトは省略
任務:射手2は機関銃手の補助である。陣地占領後は、可能な限り掩護をとりつつl.M.G.の左後方側に位置する。掩護が確保できる、または火力優勢の場合はl.M.G.のそばにとどまる。状況により近接戦闘員(例:突撃阻止)としても行動する。責任は次のとおり。 Gurttrommelの手渡し。 弾薬箱から給弾する場合の陣地占領時の補助。 空になった50連ドラムマガジンへのベルトリンクの補充(弾薬箱から)。 作動不良の除去の補助、銃身交換、2脚(Zweibein)の調整。 l.M.G.整備の補助。

射手3(Schütze 3)
装備:銃身ケース入り予備銃身1本、弾薬箱2個、弾薬箱運搬ベルト、小銃、短スコップ。
任務:射手3は弾薬手(Munitionsschütze)である。戦闘では可能な限り後方の完全な掩護に就く。責任は次のとおり。 弾薬の手渡し。 空になった50連ドラムマガジンへのベルトリンクの補充(弾薬箱から)。 陣地転換時に残置されがちな弾薬・装具の回収。 射撃用弾薬の点検。 状況により、小銃射手・近接戦闘員として独立行動。

射手4~9(Schütze 4–9)
装備:
a) 小銃、弾薬収納ポーチ2個、短スコップ。
b) 分隊内で主として指定された手榴弾投てき手には、手榴弾を追加支給。
c) さらに命令に応じて50連ドラムマガジン(特に徹甲弾入り)、発煙手榴弾、集束手榴弾、弾薬、三脚(Dreibein)。
任務:
a) 射手4~9は小銃で火力戦闘を行い、近接戦闘員でもある。
b) 副分隊長は加えて次の責任を負う:
分隊の結束の維持(個々の射手の遅れを許さない)
すべての命令の実行監督
小隊長および隣接分隊との連絡維持
前線の標示。前線旗を携行する。


2.重機関銃(s.M.G.)として

M.G.34 を M.G.-ラフェッテ34(三脚架)に M.G.-照準装置を装着して用いると s.M.G. となる。

装備と任務(表)

機関銃指揮者
装備:M.G.-照準装置、銃身ケース(Laufschützer)に予備銃身1本、弾薬箱1、拳銃、双眼鏡、行軍コンパス、地形角度測定器、短スコップ、サングラス、書類ケース(ハンドボード・メモ帳・筆記具入り)、懐中電灯
任務:M.G.要員の訓練、武器および装備の整備・常時戦闘用意の維持に責任を負う。 戦闘では任務遂行の責任者。隠密な M.G. の前進誘導、射撃位置の選定・設営・占領、M.G. の射撃統制、戦場の継続監視(敵・味方)、上級指揮官との連絡、陣地転換の準備措置、弾薬・装備の補給。

射手1(機関銃手)
装備:M.G.34(2脚、携行用スリング) ※必要に応じ軽機関銃(l.M.G.、急襲時など)として用いるため50連ドラムマガジンで装備するのが有利。ガンナーズツールポーチ、拳銃、短スコップ、サングラス
任務:機関銃指揮者の代理。戦闘では自身の M.G. を運搬し、操作し、発生する作動不良を除去する。

射手2
装備:M.G.-ラフェッテ34、拳銃、短スコップ
任務:機関銃手の助手。射撃位置では射撃開始の準備で機関銃手を補助し、作動不良の除去を手伝う。

射手3
装備:弾薬箱2個、銃身ケースに予備銃身1本、弾薬箱運搬ベルト34、小銃、短スコップ
任務:弾薬手。必要に応じ、戦場(敵・味方)の観測担当、または連絡射手(射手4と同様)の役割を担う。

射手4
装備:弾薬箱2個、銃身ケースに予備銃身1本、弾薬箱運搬ベルト34、小銃、ワイヤーカッター
任務:弾薬手。M.G.分隊長や小隊長、もしくは M.G. が配属されている部隊指揮官への連絡の責任を負う。

射手5
装備:弾薬箱1個、50連ドラムマガジンを2個※、対空射撃用支柱34※、弾薬箱運搬ベルト34、小銃、斧または短スコップ
任務:射手3と同じ。
※ これらは命令のある場合のみ携行。携行しない場合、代わりに弾薬箱をもう1個持つ。 ※ s.M.G. としては50連ドラムマガジンは使用しない。ラフェッテのフレームに干渉し装着できないため。





II.M.G.への2脚の取り付けと、各射撃架への据え付け

1.2脚の取り付け
左手で M.G. を下側からバレルジャケット前部でつかみ、右手でフロントサイトを立てる。右手で2脚をフロントサイト後方(図24)へ上から当てる。左手の人差し指と中指で固定板ばねをバレルジャケットへ押しつける。 右手で2脚を差し込み部へ回し入れ、固定ばねが2脚の切欠きに確実に嵌合するまで動かす。 2脚を中間支持具(バレルジャケット後部)として装着する場合も手順は同じ。旧式の M.G. では差し込みは右下から行わねばならない。 バレルジャケットへ折りたたんで固定するには、2脚を前方位置へ取り付けること。

2. 前部支持から中間支持への移行
銃を掩蔽に引き込み、安全な姿勢をとる。 左手で固定板ばねを押して2脚(前部支持)を解放し、上方に回してバレルジャケットの溝から外す。2脚を中間支持位置の溝に合わせ、固定板ばねが切欠きに確実に掛かるよう収める。銃身が熱い場合はアスベスト製の耐熱布を使う。フロントサイトおよびリアサイトは立てた状態を前提とする。

3. MG34を三脚に載せる
左手でバレルジャケット中間支持部の前方を保持。右手でリアサイトを立て、グリップは体側。銃口をやや上向きにし、三脚の銃架に横から載せる。固定板ばねを押さえつつ回して、受け座の切欠きにロックが噛む位置で固定。三脚を前部支持として用いる場合は、向き・手の位置が異なるので注意する。





4. MGラフェッテ34の展開
射手2が中央支柱のラッチを解放して前脚を前方へ出し、脚を希望する角度で固定する。射手2・3が後脚のナットを緩め(射手2は右、射手3は左)後方へ振り出して高さを調整。ウイングナットとラフェッテの受け側に刻まれた凹凸が噛んだことを確認して締め付ける。地形・状況によっては少人数でも展開可能。

射手2は図27が示すように、左手で上部架台の後部を保持し、上部架台をロックしているラッチを前方へ押し、上部架台を持ち上げる。同時に右手で照準装置を後方(体側)に強く引き垂直にして、上部架台とロックさせる。 上部架台が水平になるよう留意。照準装置は高さ調整ハンドルで概ね半分ほどの高さに設定し、この状態で上部銃架は水平でなければならない。水平でない場合は脚の角度を調整し水平にする。


5. MG34をMGラフェッテ34に装着
機関銃手(射手1)が照準器を立て、グリップ側のスリングを外し、ラフェッテのクランプ金具を開放。銃を持ち上げた姿勢で、固定ピン(グリップ後方にある)をラフェッテ側の爪に掛け、バレルジャケットを回転式軸受けに載せ、クランプを閉めて固定。 機関銃手はMG照準装置を照準器ベース台に差し込み、クランプねじで締める。

照準器の基部はベース台に完全に差し込むこと。 取り外し・折り畳みは逆順。格納時は照準装置を一番下、かつ中央の位置まで動かし、固定レバーを操作して各部が動かない状態であることを確認する。




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