■銃身交換




機関銃本体を前後2分割し迅速な銃身交換を実現したMG34。MG42では生産コストを下げる簡素な構造を採用しながら、さらに早い銃身交換を実現した。ここではMG42の銃身交換について紹介する。




銃身交換の手順。コッキングハンドルを引き、ボルトを後退位置にする。ボルトが前進位置にある場合、ボルトと銃身は閉鎖してつながっているため銃身は外れない。弾帯が装填された射撃中であればボルトは後退位置で止まるためコッキングハンドルを引く必要はない。



バレルジャケット右側後部、銃身固定用ラッチを開く。このラッチは不用意に開かないようロックが掛かっているため、ラッチを銃口側へ押しながら横へ開く。ラッチのロック解除はやや重い。






この角度まではラッチだけが開き銃身はまだ動かない。ボルトが前進位置にある場合はこの角度以上にラッチは開かない。








さらにラッチを開くと、銃身がバレルジャケットの右側へ出てくる。
























ラッチの動きに連動し銃身後部がレシーバーから外れる。ここまでの作業に要する時間は僅か2秒ほど。「ラッチを開く」という1つの動作で、銃身の固定解除、即座に取り出せる位置へ銃身を移動させる、という2つの働きを両立する。














銃身を後方へ引き抜く。射撃直後の銃身は高温なので手袋や耐熱パッドを使い手を保護する。今回の写真ではスタータータブをバレルエクステンションの穴に差し込んで引き抜いている。銃身の引き抜きは途中での引っかかりや抵抗は無くスムーズ。






交換する銃身を差し込む。ラッチの内側に通し、バレルジャケットの銃口部に押し込む。




銃身後部のバレルエクステンションには差し込む向きがあるので注意する。写真のような斜めの状態はNG。




最後にラッチを閉じる。銃身先端の差し込み位置が浅いとラッチが閉まらないので、銃身の差し込みは奥まで確実に行う。銃身交換に要する時間はすべての動作がスムーズにできれば6秒、少し手間取ると8秒、遅くても10秒程度で完了する。

銃身は速射の場合150発、5〜7発程度のバースト射撃を繰り返す場合は250発が交換の目安。MG42の銃身命数は3,500〜4,000発程度とされている。












バレルジャケット内部の銃身を横へ引き出す円形部品が内側に付いたラッチ。最大110度まで開く。




・簡単に取り外し可能な銃身交換機構
・射撃時には銃身本体が前後に動く(ショートリコイル)ため部品がスムーズに動く「遊び」が必要
・削り出しに比べ精度が劣るプレス製バレルジャケットの採用

このようなマイナス要素を克服し、装着した銃身は最小限のクリアランスを残し「ガタつき」がほぼ無い精度で保持される。











バレルジャケット内部の左側にはU字型の金具がリベット止めされている。この金具は銃身の保持と銃身の前進を止める役割を果たす。部品表面には「ehs」の製造メーカーコード。






バレルジャケット後部。ローラーロッキングのローラーを内側に押し込み閉鎖を解除するスロープやバレルエクステンションと嵌合して銃身を高精度に保持する削り出し部品が配置されている。












銃口部は2つの高精度な削り出し部品のスリーブによって銃身先端が保持される。








バレルジャケットの先端に内蔵されたスリーブ。内側に収まる銃身ガイドスリーブの位置を決めるため、4つのスリットが加工されている。このスリーブは消炎器の固定基部も兼ねており、前面に「ehs」の製造メーカーコードが打たれている。














銃身の先端にかぶさる銃身ガイドスリーブ。このスリーブは斜めに差し込まれる銃身交換に対応するため左右非対称の形状。外周に加工された4か所の突起とスリットが嵌合することで正しい向き・角度に収まり、バレルジャケット先端で高精度に保持される。スリーブは銃身先端のリブと噛み合い銃身と一体化、ショートリコイルの際には銃身と共に前後に動く。






銃身ガイドスリーブは取り外しできる。赤矢印で示した消炎器緩み防止ラッチの基部によって後方への脱落を防いでいるため、ラッチを上げながらバレルジャケット後方へ引き抜く。




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