■ボルト その3




■ローラー 閉鎖解放時

MG42の特徴であるローラー・ロッキング機構。2つのローラーが中央によった写真の状態が閉鎖解放状態。つまり、ボルトが前進位置以外の時にはこの状態となる。








■ローラー 閉鎖時

引き金を引くと、後退位置にあったボルトが前進。銃身側のバレルエクステンションにボルトが入り込みローラーがバレルエクステンションの壁に当たると、ローラーは左右へ広がりながら動く。写真の位置までローラーが動くと、バレルエクステンションの溝と嵌合して閉鎖・ロックが完了する。






2つのローラーはボルトの解放・閉鎖を行うと同時に、ファイアリングピンが収まるロッキングピースの動きも制御する。ローラーの位置によってロッキングピースの移動が確認できる。




ローラー、ロッキングピース、ファイアリングピンとボルトキャリアの位置関係。

■写真上 閉鎖解除
リコイルスプリングに押されるボルトキャリアによってロッキングピースも前進しようとするが2つのローラーに動きを阻まれている。

■写真下 閉鎖状態
ローラーが広がると、ロッキングピースが前進する。移動量は4mm。




ロッキングピースが前進した時(閉鎖時)だけ、ファイアリングピンが突き出す。




■刻印










ボルトの各部に確認できる刻印。「dfb」の製造メーカーコードはグストロフ社を示す。


















こちらは別個体のMG42ボルト。各刻印はそれぞれ何を意味するものかほとんど不明であるが、「cra」はMG42を生産していたマゲット社の製造メーカーコード。




■ボルトキャッチ




ボルトキャッチ(写真右の部品)は強力なスプリングによってロッキングピースを前に押し出す役割を果たす。第二次大戦中のドイツ軍では使用されず、戦後になって採用された部品。エジェクターロッドの中に配置しボルトキャリアの中に収める。MG42のボルトキャリアは無改造で使える。




MG42のロッキングピースやローラーは写真のようにリコイルスプリングの力によって押されているが、これでは押し出す力が弱いため、バレルエクステンションに入ったボルト部品などが閉鎖時、僅かに跳ね返る可能性がある。この跳ね返り中の特定の条件下で撃発されると、ガス圧が高い状態で早期にロッキングが解除され薬莢が破断、銃本体の破損や射手の負傷につながる恐れがある。

特定の条件下とは、
・ボルトキャリアが1.5mm以上跳ね返る。
・ボルトロッキングピースが1.5mm以上跳ね返る。
・ローラーが1.5mm以上跳ね返る。
・雷管の発火に遅延が生じる。 ※MG42は閉鎖と同時に雷管を叩く機構を有しているため、発火タイミングの遅れは雷管本体に問題がある。

の4つを指し、この4つが同時に発生しないと問題は生じない。

この問題はドイツ軍でも認識され、要因を探る様々な試験結果からボルトの跳ね返りを防止する主な要因を突き止め議論されたが、第二次大戦中のMG42に改良が施されることは無かった。




ボルトキャッチのバリエーション。写真上の2つが西ドイツ製、下がユーゴスラビアのM53用。これらはMG42でも使える。




第二次大戦後に生産されたMG42の派生型(M53、MG1、MG2、MG3など)にはボルトキャッチ部品が追加されており、ボルトキャッチが無いMG42では射撃してはならない、という認識が広がっている。ボルトキャッチ無しのMG42と現在流通している真鍮製薬莢の弾薬を使用した射撃レポートでは、およそ1,000発に1回程度の割合でこの現象が発生するとの情報があり、この割合は深刻な欠陥として無視できない。

このように大きな問題を引き起こすボルトの跳ね返りに対してドイツ軍が具体的な対応策を実施しなかったのは、当時のドイツ軍が使用していた弾薬(特にスチール製薬莢に関して)では跳ね返りが生じても薬莢の破断までには至らず射撃が継続できたのではないか?との推測もあるが詳細は不明。また発生条件の一つに挙げた雷管発火タイミングの遅延に関しては雷管に改良が加えられたとの情報もある。




もどる