■MP38/MP40用マガジン




「MP38とMP40は同じマガジンを使う。初期タイプはマガジン側面にリブなし、中期以降はマガジン側面にリブが追加される」と大雑把にはこのようなイメージだが、実際にはもう少し奥が深い。ここではMP38とMP40のマガジンについて掘り下げる。







スチールのプレス製で9×19㎜ パラベラム弾を32発収納できる。マガジンは大きく分けて3つに分類される。

タイプ0・・・側面リブなし(Slab-sided)
タイプA・・・リブ後加工(After-ribbed)
タイプB・・・リブあり




■タイプ0


MP38の採用と共に初期に生産された側面にリブが無いマガジン。製造は1938年から1942年前半まで。

内部の弾薬が2列に並ぶ「ダブルカラム方式」とマガジン上部で弾薬が2列から1列に合流する「シングルフィード」を採用。しかし、弾薬がマガジン内で詰まる事案が頻繁に発生した。またMP38暴発事故の防止策として軍が推奨した「ボルトを後退の安全位置にする」方法はマガジン上部からのゴミ・砂塵などの異物進入を招き、給弾不良をさらに増加させた。

マガジンフォロアー、スプリング、マガジンリップの形状や強度など、徹底的にマガジンの問題点を調査したものの有効な解決策とはならず、給弾不良を減らす策として「射撃時にマガジンを保持しない」事も徹底されたが効果は薄かった。この問題はイギリスのステン短機関銃でも発生しており、この方式を採用したマガジンに共通する難問であった。






タイプ0は2種類に分類できる。マガジン左側面下に打たれた刻印の有無。MP40の採用以前に生産された極初期型には刻印が無い。MP40採用後に生産されたタイプ0にはMP38とMP40のどちらにも共用できることを示す「M.P.38u.40」の刻印が打たれている。



写真上が1940年製の共用刻印無し、写真下が1941年製の「M.P.38u.40」刻印ありのマガジン。

同一に見える2つのマガジンだが、共用刻印なしの極初期タイプはマガジン上部のサイズがやや大きく、さらにMP40のマガジン差し込み口はMP38よりも寸法が小さいため干渉して入らず、使えない。MP38専用マガジンとなる。

寸法変更の理由は分からないが、共用刻印ありのマガジンは給弾不良を改善するための何らかの改良が施されており、給弾不良が発生しやすい旧型マガジンをあえてMP40では使用できないようにする対応策であった可能性が考えられる。一方、まったく同じ形状のマガジンでありながらMP40で使える/使えないという問題が生じるため、運用側は混乱する。

マガジン上部の寸法比較。40年製の方が少し大きい。

40年製 前幅:22.3㎜  後ろ幅:23.2㎜  長さ:34.4㎜
41年製 前幅:21.9㎜  後ろ幅:23.2㎜  長さ:34.4㎜




マガジンハウジング前側の寸法もMP38(写真左)に比べMP40(写真右)の方が0.2~0.3㎜程度小さい。写真からも前方の幅が狭くなり台形になっているのが確認できる。

この寸法差からMP38用のマガジンはMP40に差し込めず、共用できない。






さらに「M.P.38u.40」の刻印がある1943年製のマガジンローダーは「M.P.38u.40」の刻印があるマガジン寸法に合わせて製作されているため、MP38専用マガジンには使えない。ローダーは写真の位置までしか差し込めない。





1940年製のマガジンにはハーネル社を示す「122」と「37」のバッフェンアムト、MP38/40共用の41年製マガジン「98E」と「WaA815」はシュタイヤー社、「fxo」はハーネル社を示すメーカーコード。




■タイプA


タイプ0にリブを追加加工したマガジン。新規製造品ではない。

タイプ0の給弾不良を調査するドイツ陸軍兵器局は主な原因が「弾薬とマガジン内壁との摩擦」らしいという事が分かり、1942年3月、すべてのMP用マガジンに対して摩擦を低減する目的でマガジン側面に2本のリブ加工を行う事を決定。これによって内部に進入したゴミや砂塵が弾薬とリブの隙間から下に落ちる、弾薬とマガジン内壁との接点が最小限になり摩擦が低減されたことにより給弾不良はほぼ解消された。一見すると補強用と思われるこのリブには給弾不良を解決する大きな役割を果たしている。

1942年8月12日、リブの追加とマガジン交換・改修に関する情報が発表された。
「MPのマガジンを変更する。マガジン内部で弾薬がスムーズに動くよう、マガジンの広い側面に2本の縦方向リブを追加加工する。変更は製造業者が行う。すでに配備済みのリブ無しマガジンをリブありマガジンに交換するよう命令する。配備可能なマガジン数=改修されたマガジン数なので、優先配備の要望は受け付けない。」

給弾不良により人命が損失しているという大きな懸念から、リブありマガジンを新規生産するだけではなく、すでに配備されている推計約120万個(42年8月時点でのMP40配備数は約20万挺、1挺のMPに対してマガジン6本が支給される)のリブ無しマガジンを回収し工場でリブを追加加工、前線へ再配備するという大規模な作業が実施された。

回収されたマガジンのリブ追加加工は主にハーネル社が担当。改修作業によるマガジンの変型や機能低下は許されないため、内側と外側を保持する治具を用意し、正確な寸法と公差が維持できるよう注意が払われた。リブが追加されたマガジンは寸法、機能検査などのテストが行われ承認を示すバッフェンアムトが打たれている。この改修はタイプ0の90%程度に実施されたといわれており、この数字が正しければタイプ0は12万個が改修を逃れ、100万個以上のマガジンがタイプAへ改修された。








後述するリブありのタイプBマガジンと似ているがタイプAマガジンは容易に識別ができる。タイプAはマガジン上部に溶接された補強材を避ける位置にリブ加工が施されているため、リブが補強材の直下で切れている。






完成後のマガジンに対してプレス加工でリブを追加した場合、マガジン内側はリブの凸により内部寸法が規定値よりも狭くなってしまう。これに対処するためタイプAマガジンはリブ加工の前に、補強材から下の内部寸法を押し広げる加工を行っている。補強材の下に続く側面ラインは直線ではなく外側に膨らみ、斜めになっている。






マガジン背面。赤矢印で示した刻印がリブ加工の改修後に打たれたバッフェンアムト。「37」はハーネル社、「WaA387」もハーネル社でこの検査用に割り当てられた数字。タイプAマガジン左側面には「M.P.38u.40」の刻印があり、MP38・MP40で共用可能。




■タイプB



側面リブ付きとして新規生産されたタイプ。補強材の内側部分にもリブが付いているため給弾不良を最小限に抑える。1942年前半から生産終了までタイプBとなる。








写真上または写真右がタイプBのマガジン。側面のリブを加工後にマガジン上部の補強材を溶接しているため、補強材の内側までリブが続く。




タイプBの1942年製と1943年製。「WaA815」「98E」「kur」はすべてシュタイヤー社を示す。またタイプBは補強材直下の膨らみがなくストレート形状になっている。




全てのタイプBに打たれていたと思われる「M.P.38u.40」の刻印。















タイプ0(MP38専用)、タイプ0(共用可)、タイプA、タイプBの比較。




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