■レシーバー その1 


アッパーレシーバーとロアレシーバーはともにプレス製となっており、同じくプレス製のグリップフレームがネジ止めで取り付けられる。これに樹脂製ストックとの組み合わせで、当時の最先端を行く優れたデザインとなった。アッパーレシーバーは単純な筒型になっており内部には大型のボルトとバッファースプリングが収まる。レシーバー後部には折りたたみストックの基部がある。




後部から見るとレシーバーの断面は円形であることがよくわかる。レシーバー本体は厚さ約1.3㎜のスチール板から製作されている。




写真中央にある丸い部品が上下のレシーバーを固定している。この固定は高精度ではなく、嵌合に隙間があるため、銃をねじるとロアーとアッパーレシーバーはカタカタと動く。




金具を下へ引きながら左右どちらかに少し回転させるとロックが解除できる。これで上下レシーバーの結合が解除される。




シアーの突起が干渉するためトリガーを引きながらレシーバーを45度ほど回転させると上下のレシーバーが分離する。




アッパーレシーバーからはボルト本体とリコイルスプリングを取り出せる。

フィールド・ストリッピングと呼ばれる通常分解はこれで完了。アッパーレシーバー、ロアレシーバー、ボルト、チューブ式リコイルスプリングと僅か4パーツだけ。紛失するような小さな部品も無い優れた設計。



MP40の機構的特徴の一つが、1920年代に生産されたエルマ短機関銃から採用されている3段伸縮式チューブに収められたリコイルスプリングであり設計者であるフォルマーが1927年に特許を取得している。スムーズな作動・異物混入防止・スプリング変形や紛失の防止などに加え、チューブ内の空気がバッファーの役割を果たすことで発射速度が低下し射撃コントロール性が向上するなど複数の特長がある。

このチューブ式リコイルスプリングは機械オイルが凍結してしまうような極度の低温下(-30度以下)においては、ボルトの動きが阻害される要因となり、複雑な構造から生産性が悪いという欠点があった。




バッファースプリングの先端から突き出すファイアリングピンはボルト中央を貫き、ボルトフェイスから1.3mm出た状態で固定される。






MP40は重量のあるボルト(単体重量420g)とややテンションが強いリコイルスプリングの採用により、9㎜パラベラム弾の反動をストレートに受ける単純なブローバック方式を採用。ロッキング機構などが無く、ボルト形状もシンプル。
※写真のボルトはエキストラクターが未装着




ボルト下面。中央の溝はエキストラクター、左右の溝はマガジンリップを避けるため、大きくえぐれた加工が施されている。左側の穴はエキストラクター取り外し用。








薬室から薬莢を引き抜くMP40のエキストラクター。MP38用は破損が多かったため、若干形状が変更され強化されている。エキストラクターはボルトの溝に差し込まれているだけで、固定するためのピンなどは無い。






アッパーレシーバーの下面には長方形の2つの開口部が設けられている。銃口側が上下レシーバーをロックする金具の差し込み口、射手側がボルトを後退位置(射撃位置)で止めるシアーを通すための穴。






レシーバーとグリップフレームはネジで接続される。メインで固定する大きなネジの横に小さなネジが嚙み合って、緩みを防止する。












ロアレシーバーから樹脂製のストックやグリップを外した状態。これまでの短機関銃とは明らかに異なるデザインとプレス部品で作られた先進的な構造がよくわかる。

グリップフレーム部品は前後に分かれた部品を中央部で溶接したスチールのプレス製であるが、1943年以降の後期生産型では生産技術が向上し、1部品のみで製作されている。




もどる