SF14Z Gi (砲隊鏡) / Scherenfernrohr S.F.14.Z. Gi.
砲隊鏡、またはカニ眼鏡とも呼ばれる光学機器の原型は1894年にカールツァイスが開発・販売したユニークな望遠鏡に遡る。この望遠鏡は左右の接眼レンズから上に伸びる2本の潜望鏡(ペリスコープ)を持ち、潜望鏡部は接眼レンズ側に回転機構を備えているため水平から垂直まで90度の範囲で角度調整ができる。垂直位置では2つの対物レンズが観測者の頭上にあるため、物陰に隠れながら観測が可能。水平位置では左右の対物レンズ距離が広がるため両眼の視差が大きくなり、対象物を立体的に見ることができた。この望遠鏡はその形状からハサミ望遠鏡(Scherenfernrohr、カールツァイスでは Relieffernrohre という名称)と呼ばれ、後に登場する砲隊鏡とほぼ同じ構造を有していた。8×20(倍率8倍、対物レンズ径20㎜)と10×25(倍率10倍、対物レンズ径25㎜)の2種類が販売され商業的には苦戦したものの、軍事用としての改良が早急に進められた。砲隊鏡は他の光学機器と比べ、次のような特長を持っている。
・ペリスコープ機能によって完全に身を隠した状態で観察ができる。
・双眼のため単眼よりも立体感のある像が得られる。
・対物レンズを横へ広げると遠近感がより強調された像となり、砲兵の着弾観測に適する。
・比較的倍率が高く、遠距離の監視に最適。
ハサミ望遠鏡の市販品をベースに段階的に改良が加えられた砲隊鏡は1905年にドイツ陸軍が採用。各国も模倣品を生産し、第一次世界大戦では両軍によって使用されると、第二次世界大戦でも引き続き使用された。
ドイツ軍が使用したSF14Zは1914年にカールツァイスが設計した砲隊鏡をベースとしており、監視、索敵、砲兵の観測用や車載用光学機器として全戦域にわたって1945年まで使用。戦後も各国でSF14Zを模倣した砲隊鏡が生産された。なおSF14に関する情報は非常に限られており、派生型の詳細や生産数などの情報が無いため、ここでは割愛させて頂く。
■各部のディテール紹介